確定判決に基づく強制執行は、これを許さない――。国営諫早湾干拓事業(長崎県)の開門をめぐる裁判で福岡高裁が新たに出した判決は、2010年に同じ高裁が判決で下した開門命令をなかったことにするものだった。事業の着工から32年。長く続く問題の解決策はまだみえない。
「驚くべき判決だ。確定判決とは一体何なのか。こんな国の態度を許していたら、社会が成り立たなくなる」。開門派弁護団の馬奈木昭雄団長(80)は福岡高裁前で報道陣に、怒りをこらえて静かに語り始めた。
開門派の弁護士や漁業者らがとりわけ強く反発したのは、「漁獲量が増加傾向にある」という認定だ。確定判決が認めた漁業被害を「回復したとは言いがたい」とする一方、国の主張を追認して確定判決を無力化する判断を導いた。弁護団は「裁判で争われてきたノリや貝類など幅広い不漁を無視し、恣意(しい)的に魚以外のシバエビなどに限って漁獲量の回復を判断している」と批判した。
福岡県弁護士会館であった開門派の報告集会には、漁業者や支援者ら約120人が参加。馬奈木弁護士は「判決理由は全部、事実誤認だ。こんな判決は最高裁で維持できるわけがない」と、上告することを明言した。
「海の底は真っ黒。潜ってみらんか」
漁業者からも「漁獲は増えて…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル