セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの3大チェーンに集約が進み、生き残り競争が激しくなっているコンビニ業界。その中で福井県の独立系コンビニ「オレンジBOX(通称オレボ)」は、早くから店内調理した総菜を収益の柱にし存在感を強めてきた。40~50席のイートインスペースを設けるなど大手にはまねのできない戦略も打ち出し、独自の路線で前進している。
■総菜を一瞬で判別
プラスチック製カップに盛りつけた総菜。重量計に置くと瞬時に「彩りロースハムマリネ」と判別。重さと値段が表示され、端末から値段のバーコードシールが印刷される。10月から福井市のコンビニ「オレボステーション高木中央」で導入されたAI(人工知能)システムだ。
上部のカメラを通した映像から判別するAIシステムは計量器メーカーのイシダ(京都市)が開発した。将来的にはデータを直接レジに送り、そのまま会計することを目指している。
オレボでは総菜が売り上げの大部分を占め、多い店では7割に及ぶ。総菜は通常でも30種類はあり、人手不足で従業員確保が難しくなる中、総菜の値付けにかかる業務負担を軽減しようとこのシステムを導入した。オレボを運営する大津屋(福井市)社長の小川明彦さんは「このAIシステムとともにレジのセルフ化も進め、さらに省人化を実現したい」と話す。
■大手にできないこと
大津屋は天正元(1573)年に酒造業として創業。その後、酒販業、株式会社化などを経て昭和56年、福井県内初のコンビニ「オレンジBOX」を出店した。
平成に入るころには県内で5店舗を展開したが、やがて大手コンビニチェーンも県内に進出。「大手にのみ込まれる」と危惧した小川さんが差別化するのに選んだのが「総菜」だった。
保存料を使わない料理の提供には、工場で調理したものを配送するのでは難しいと判断し、店内での調理にこだわった。
6年に福井市内のショッピングセンターで総菜店を開いてノウハウを蓄積。調理の一部は直営工場で効率化しながらも、7年以降、コンビニ店内の調理場で作りたての総菜提供を本格化した。今やスーパー、コンビニといった小売業界は総菜類に力を入れるが、これを先取りした形だ。
16年にはダイニングコンビニ「オレボステーション」と銘打ち、イートインスペースを充実させた。大型店で40~50席を基本として、地域の社交場としての機能を持たせた。
大手のコンビニは調理場やイートインを大きく構え、調理スタッフを配置する経営モデルを取っておらず、小川さんは「コンビニと総菜店の融合、これだけ広いイートインは大手にはできない」と胸を張る。
■「戦略的に縮む」
高速道路のパーキングエリアで軽食を主力とした店を営むなど業容を広げ、コンビニ業態7店、総菜店3店などを展開。令和元年8月期の売上高は24億円を超え、過去最高となった。こうした成長でも、小川さんは「日本の人口は減るなかで、戦略的に縮まないといけない」と言い切る。総菜を判別するAIもそうした考えで導入した。
一方、個性を打ち出すため、ナショナルブランドを抑えて商品の4分の1を地元のローカルブランドに替えることを計画している。小川さんは「他企業と同じ部分は縮小させていくが、他がやっていないことを見つけ、それを拡大する」と話している。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース