北海道の知床半島沖で観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故をめぐり、国土交通省は4日、被害者の身元特定につながる遺骨や様々な遺留品を発見した捜索ボランティア隊に対し、感謝状を贈った。隊長を務める羅臼町の漁師、桜井憲二さん(60)は「(被害者を)1人でも家族のもとに帰してあげたい、という思いが一番でした」と、捜索を繰り返してきた動機を語った。
感謝状の贈呈は、知床半島の事故現場とは反対側にある羅臼町の漁協で行われた。国交省北海道運輸局の井上健二局長が、捜索ボランティア隊を代表して出席した桜井さんに手渡した。
桜井さんによると、昨年5月から今年8月までに、知床半島先端付近で9回の捜索を行った。参加した隊員はのべ61人にのぼり、消防隊員や登山の熟練者などで構成する。札幌市などの知床から遠い人もいるが、全員が装備や知床半島までの交通費などを自費で出している。
桜井さんは「表彰の名前が自分個人であったなら受ける気はなかった。捜索隊みんなに対する表彰だったので、みんな一緒にがんばってくれたので、(表彰を)受けたいと思った」と語った。
桜井さんが、行方不明者の捜索に乗りだそうと考えたのは昨年4月28日。事故発生から5日後のこの日、羅臼沖で3人の行方不明者が見つかったからだ。
「羅臼側の海岸にも漂着しているかもしれない」
「道路が途切れた先にある知床岬周辺は、捜索の空白地帯になっていないか」
そう考えた桜井さんは、登山仲間に呼びかけ、ボランティア隊を編成した。
昨年5月3日に1回目の捜索を実施。2回目となる昨年6月26日の捜索では男性もののネックレス、女性用のダウンベストなど、遺留品の可能性があるものを次々に発見した。
そして、昨年8月13日から2泊3日で行った3回目の捜索で頭蓋骨(ずがいこつ)を発見。5回目の捜索となった昨年9月17日には豊田徳幸船長の遺体を見つけた。昨年中の捜索は計6回に及んだ。
事故から1年後の今年5月4日に実施した7回目の捜索後、桜井さんはマスコミ各社を前に「これ以上探しても無理。どこかで家族にも踏ん切りをつけてもらわないといけないな、という気持ちでいました。まさにそういう日でした」と語り、最後の捜索であることを宣言していた。
しかし、状況を変える想定外の事態が起こる。
「洞窟の奥、捜索の空白になってないか」
被害者の家族から「捜索の費…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル