本格派の映画は長いという固定観念が覆る。今年の大阪アジアン映画祭は短編が豊富だ。25分で外国人労働者の問題をあぶり出し、人気俳優が4分の作品に出演。AI(人工知能)が脚本を考えた新作やウクライナの若者を描いた作品も上映された。
3月10日に始まり、17回目を迎える同映画祭は、30以上の国と地域から集まった76作品が上映される。このうち、60分未満の短編は30に上り、前回の2倍以上に増えた。
3月18日公開の「母のガールフレンド」(アルン・フラーラー監督/15分)は、ひと組の同性カップルを描く。インドを舞台に、労働者階級の女性カップルと家族の葛藤を見つめる。NHKの朝ドラ1話分の短さだが、恋愛や家族をめぐる問題を深く問いかける。
同日公開の「手袋を買いに」(イ・ヒョンジュ監督/28分)は、日本語教室に通う韓国人女性が主人公。恋人はいるが、自分が相手に合わせてばかり。なし崩し的に将来を決めていいのか。揺れ動く感情が淡々とつづられていく。
すでに上映が終了している作品にも秀作がそろう。
韓国・中国の作品「めちゃくちゃな日」(チャオ・ダンヤン監督/25分)は、コンビニを舞台に物語が動く。ある日、主人公が未払いの賃金を請求しに店へ行くと、たどたどしい言葉で働く中国人女性の姿が。
給料を受け取れるのかという謎で観客を引き込みつつ、若者の就職難から企業による搾取、女性の連帯までをも描いた。短時間の中に立ち上がる社会の「いま」。短編ならではの展開の妙に満ちた逸品に仕上がっている。
ウクライナの若き2人
国内初上映のウクライナ映画もある。「二度と一緒にさまよわない」(ユージーン・コシン監督/35分)は、旅先のトルコで知り合ったウクライナ人男女の1日を描く。
若者の恋愛やコメディー寄りの作品だが、登場人物の会話の端々に現在のウクライナ情勢につながる要素が読み取れる。
戦争も短編で描く時代だ。
「442 二世兵士」(星山遼介監督/23分)は、第2次世界大戦中の1944年、ナチス占領下のフランスを舞台にしている。
登場するのは、アメリカ陸軍の日系アメリカ人部隊「第442連隊戦闘団」。ナチスの抵抗勢力との戦い、愛国心やアイデンティティーといった様々な葛藤が凝縮されている。
AIも脚本を作る
今や、人間だけが物語を作る世の中ではない。
国内映画「少年、なにかが発芽する」(渡辺裕子監督/26分)は、人工知能が脚本を担当した。
なぜ今、短編なのか。映画祭のプログラミング・ディレクター・暉峻(てるおか)創三さんに聞きました。記事後半で。
トマト嫌いの少年はある日…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル