日本の砂浜海岸はどこもゴミだらけ。なんとかせねばと、頼もしい助っ人が現れた。宮城県美里町にある従業員9人の会社が開発した、砂浜清掃専用の「特掃車」だ。
カナダ製の6輪バギーを特注で輸入した。林業や米軍でも使われている全地形対応車だ。改造して四角いカゴ部分を連結し、爪で地表の砂をかき出して、木の枝やプラスチック片をさらう。今年3月に特許も取得。砂浜の生態系を傷つけないよう、改良を重ねた。
このほか荷台をつけたバギーもあり、人手で集めた漁具など、大きなゴミの運搬にも力を発揮する。
つくったのは創業5年の「S・T・K工業」。用途に合わせ、大型車に様々な架装をするのが本業だ。
ある時、顧客の建設会社から、海水浴場清掃用の機械の相談を受けた。佐藤哲也社長(44)は海岸に行ってみて驚いた。漂着したゴミや、遊びに来た人が捨てていったゴミの多いこと。「なぜきれいにしないんだ?」。モノづくり屋の血が騒ぐ。一昨年、会社に「海洋環境美化事業部」を立ち上げた。
七ケ浜町菖蒲田浜、仙台市若林区の深沼海岸……。県内あちこちで地域住民やサーファーらが、人海作戦によるビーチクリーンに取り組んでいる。特掃車が完成した昨年以降、砂浜に入る許可を得たうえで各地の活動に参加し、清掃にあたる。基本は無償の社会貢献だ。
「砂浜のゴミとの戦いは容易ではない。本気でやらないとダメ」と、佐藤さんは言う。行政に重い腰を上げてもらい、いずれ清掃事業や車両の受注につなげることが目標だ。(石橋英昭)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル