東証1部上場の大手不動産会社「フジ住宅」(大阪府岸和田市)が在日外国人を差別する文書を職場で配ったことが違法かが争われた訴訟の控訴審判決が18日、大阪高裁であった。清水響(ひびく)裁判長は「職場で差別的言動が生じる温床を会社側が自ら作りだした」として、一審・大阪地裁堺支部判決に続いて違法と判断。会社側に文書配布の差し止めを命じ、損害賠償額を一審の110万円から132万円に増額した。
高裁判決などによると、同社は2013年以降、韓国人や中国人を侮辱するネット記事や雑誌のコピーを全社員向けに配ったほか、韓国籍や中国籍の人に対し「死ねよ」「卑劣」「野生動物」などと書いた文書も配布した。02年からパート社員として働く在日韓国人女性は「文書の配布で精神的苦痛を受けた」と訴え、同社と会長に計3300万円の損害賠償と文書配布の差し止めを求めていた。
清水裁判長は、文書について、女性個人に対する差別的言動とは認められないが、民族差別的な表現があり、会社側は「職場で民族差別の思想を起こさせ、人種間の分断を強化することがないよう配慮する義務がある」と指摘。文書が職場で配られ、女性の「民族差別的思想を生み出さない職場で就労する人格的利益」が侵害されたと判断した。
同社は一審判決後も文書配布を続けたほか、裁判を続ける女性を非難する社員らの意見を載せた資料を社内で配っていた。
判決は、こうした配布についても「女性を職場で孤立させ、訴訟による救済を抑圧するものだ」として違法と判断。同社が東証1部上場企業であることを踏まえ「職場で民族差別的思想が醸成されない環境作りに配慮することが社会的にも期待される立場にもかかわらず、怠った」とし、一審よりも賠償額を増額した。
フジ住宅は「(文書配布の)差し止めを認めたことは、過度の言論の萎縮を招く。判決は到底承服できず、上告の申し立てを行う」とコメントした。
「判決受け止めて変わって」、原告女性が訴え
原告の女性は判決後、大阪市内で記者会見し「判決に書かれたことを会社が本気になって考えてくれたら、すごく良い企業に変わるはず。判決を受け止めてほしい」と訴えた。
昨年7月の一審・大阪地裁堺支部判決は、フジ住宅が職場で差別的な文書を配ったことを違法と認めた。だが、同社は判決後も、女性が提訴したことなどを非難する文書を配布した。そのため、女性は控訴審で、損害賠償に加え、文書配布の差し止めも求めた。
この日の高裁判決は、同社が大量の文書を継続的に配ったことを重くみて、配布の差し止めも命じた。女性の代理人の村田浩治弁護士は「差別的な意識を醸成させないように配慮すべきだということを、企業の義務として明確に示した点で意義がある。原告の被害に向き合った判決だ」と評価した。
女性は「一審判決が出てから、会社は何も変わらなかった。いくら司法が良い判決を出したとしても、受け止める会社側が変わらなければ、同じようなことが続く。正直、今も不安でいっぱいです」と語った。(米田優人)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル