「新しい歴史教科書をつくる会」の元幹部らが編集した育鵬社(いくほうしゃ)の中学教科書の採択推進運動への協力を社員に求めたのは人権侵害にあたるなどとして、大阪弁護士会は、東証1部上場の不動産大手・フジ住宅(大阪府岸和田市)に改善を勧告した。勧告は11日付。
勧告書によると、同社は2013年4~7月、韓国を批判する雑誌記事などを全社員に配布。また15年5~6月、育鵬社の中学教科書を採択させるため、全社員に居住地の自治体の市長らに手紙を送らせたり、各地の教育委員会の教科書展示会のアンケートに回答させたりした。同社は勤務時間中もこうした行動を許可していたという。
勧告は、育鵬社の教科書を推奨する行動をした際は会長に報告するよう同社は社員に求めており、社員が行動したかどうかで待遇で差別を受ける可能性があると指摘。自己の思想・良心を侵害されるおそれが高いと判断した。
パート社員の在日韓国人の50代女性が15年3月、大阪弁護士会に人権救済を申し立てていた。女性はフジ住宅のこうした要求で精神的な苦痛を受けたなどとして、同社に損害賠償を求める訴訟を起こし、大阪地裁堺支部で係争中だ。女性は「社会の多様性を大切にする姿勢を示していける会社を目指してほしい」とのコメントを出した。一方、フジ住宅は「(行動は)強制しておらず、待遇を差別したこともない。人権侵害にはあたらないと考えている」としている。(米田優人)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル