神奈川県内各地に甚大な被害をもたらした台風19号の上陸から12日で2カ月が経過した。同県内では、一部で住民の避難所生活が続く一方、土砂災害による通行止め解除や温泉施設の営業再開が進むなど、復旧状況に差がみられている。災害の影響を特に大きく受けた相模原市、川崎市、神奈川県箱根町の現状を追った。
相模原市では、土砂崩れで寸断された道路の復旧工事が進んでいる。東京五輪のロードレース(自転車)のコースに指定されている国道413号は、青山交差点と両国橋交差点の中間の道路が2カ所崩落し、約6キロメートルの区間がいまも通行止めとなっている。
当初は競技開催が危ぶまれたが、11月から市と国による作業が加速。通行止めは年内に解除する見込みとなり、市担当者は「競技開催の見通しがたった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。本村賢太郎市長は「復興のシンボルとして開催に全力を尽くす」と力を込めた。
一方、自宅の全壊などにより、いまも一部の住民が避難所生活を余儀なくされている。市が把握している避難者数は計9人(9日現在、市が運営する避難所以外の施設での自主避難者も含む)。
また、緑区の道志川沿いのキャンプ場は、いまも営業再開のめどが立たない。市は災害対策本部を10日で閉鎖。復旧・復興推進本部に一本化し、被災したインフラを中心とした生活再建を進めていく。同本部を運営する市の企画政策課は「市民一人一人に寄り添って、もとの生活を取り戻していきたい」と話している。市内のライフラインは、11月末までに電気・通信ともに復旧した。
多摩川の水の逆流と河川氾濫による浸水被害が相次いだ川崎市では、市内で最大162カ所設けられた避難所は全て閉鎖。一時避難を含む公営住宅への転居は67世帯に上っている。福田紀彦市長は6日の定例記者会見で「家屋内部では後片付けに追われているなど、市の被災はなお続いている」との認識を改めて示した。
市が公表した全市の床上・床下浸水は、中原区と高津区を中心に計1557件(10日時点)。市災害対策本部は「伸びは鈍化し、浸水被害の全容が見えつつある」とした。浸水被害を受けた住人らに市は説明会を開いているが、ゲート(水門)の開閉をめぐって市の対応の不備を指摘する住民らが係争の動きを強めている。
美術品の地下収蔵庫が水没した市市民ミュージアムは、収蔵品約26万点中、上層階に保管していたことなどにより、約3万1千点が水没を免れていたことが分かった。市は6日から搬出作業を本格化。カビの発生を抑制するため、一部の収蔵品を冷凍保管するなどの処置をしつつ修繕を進める。市側は「作業は10年以内に終わらない可能性もある」との見通しを示した。
箱根町では、土砂崩れなどの影響で一部区間で運休が続く箱根登山鉄道が、来年秋ごろに全線での運転再開を目指す方針を明らかにするなど、全面復興への道筋が見えてきた。通行止めになっている国道なども12月中に多くが規制解除となる見込みで、町などは観光客を呼び戻そうと全力で復旧作業を進めている。
同鉄道は、箱根湯本駅-強羅駅間で、倒木などの被害を20カ所以上で確認。最も被害が大きかった蛇骨(じゃこつ)陸橋の橋脚などが線路とともに流失した現場は、現在の軌道を仮設ルートとして復旧させ、来年秋ごろに全線での運転を可能にする。その後、土砂崩れの被害を回避できるよう新たな橋を整備する方針だ。
通行止めになっていた国道1号は、3日に規制を解除。国道138号は、一部で規制が続いているが、碓氷洞門-小塚入口間は12月下旬に通行可能となる見込み。そのほかの県道なども着々と作業が進んでいる。
温泉の供給がストップしている旅館なども8軒(5日時点)にまで減った。立ち入りが禁止されていた仙石原のススキ草原は、全長700メートルの遊歩道の路面補修が進み、入り口から約150メートルまでの立ち入りが可能となった。
強羅駅付近の小売店の60代男性店主は「積雪などの影響を受けずに、復旧作業が進んでほしい。11月の売り上げは前年比3割減で、順調に客足が戻ってくれれば」と話した。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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