2014年に神戸市長田区で小学1年女児(当時6)が殺害された事件で殺人罪などの罪に問われた被告について、一審の裁判員裁判の死刑判決を破棄して無期懲役とした二審判決を、最高裁が維持した。その決定を受け、女児の母親が代理人の弁護士を通じてコメントを出した。要旨は次の通り。
◇
私たち遺族は被告には生命をもって償ってもらうほかないと考えておりました。高裁で無期懲役の判決が出た後も、最高裁で覆していただけると信じてきましたが、そのような思いはかないませんでした。
裁判員裁判では死刑が相当と判断していただき、その判断が正当だったと今でも確信しています。娘は理不尽に命を奪われ、6年しか生きられませんでした。生きていれば、今年、小学校を卒業することになっていたはずです。私たち遺族は、あの事件の日から時間が止まったままでいます。事件は、娘の将来を全て奪ってしまいました。
被告は、娘の味わった痛み、苦しみ、恐怖、絶望、遺族の悲しみを理解しているとは思えませんでした。反省も、償おうとする思いも伝わってこず、ただ、刑を軽くしようとしているとしか思えませんでした。
裁判員裁判では、長時間審理して、犯罪の悪質さや被害の重大さを正面から捉えていただきました。その上で、事件の残虐さや被告の反省のなさを見極めて、死刑以外にはないと判断していただきました。
その判断を高裁や最高裁が覆してしまったのは納得がいきません。前例を大事にしているだけで、一人の命の重さを理解していないとしか思えません。亡くなったのが一人なら死刑にならないという前例は、おかしいと思います。計画性がないとか、前科がないというのも、それだけでは死刑にしない理由にはなりません。前例だけで判断して、命の重さを直視しないのであれば、何のために裁判員裁判をしたのかと思います。
最高裁の決定には納得できませんし、娘に報告できないと考えています。裁判員裁判での判決を維持してもらうことができず、娘には申し訳なく思います。改めて、娘の冥福を祈ります。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル