福岡県は7日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の対象となったことを受け、県内での対応策を決めた。酒類やカラオケを提供する飲食店には休業を要請し、それ以外の飲食店や大型商業施設などには営業時間を午後8時までに短縮するよう求める。県内への緊急事態宣言は3回目。12日から今月末まで適用される。
服部誠太郎知事は7日、政府方針の決定を受けた県対策本部会議後に記者会見を開き、政府の基本方針に従って決めた対応策について説明した。県の要請とは異なる緊急事態宣言の適用について、「政府として広域な感染防止を図らなければいけない観点で決められた。我々としては受け入れざるを得ない」と述べた。
休業要請は県内全域の酒類、カラオケ設備を提供する飲食店や喫茶店が対象。酒類の持ち込みを認める飲食店、ナイトクラブなども含まれる。酒類を提供しない飲食店や喫茶店に加えて、床面積が1千平方メートル超の百貨店やショッピングセンターなどの大型商業施設(生活必需品を除く)には、午後8時までの営業時間短縮を要請する。
飲食店が要請に応じた場合、協力金を支給する。中小企業には売上高に応じ1日4万~10万円、大企業には売上高の減少額に応じ1日最大20万円を支払う。
映画館や劇場などは人数を上限5千人、収容率50%以内に制限し、午後9時までの開催とする。県が所有する施設は原則閉館し、県主催のイベントも中止や延期をする。
11、12日に県内20市町村で予定していた東京五輪の聖火リレーは、公道での開催を中止する。代わりに11日に平和台陸上競技場(福岡市中央区)、12日に関門海峡ミュージアム(北九州市門司区)で無観客での点火セレモニーを開催する。
県内では7日、過去最多を更新する472人の新規感染者を確認した。直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者は42・9人、10万人あたりの療養者数も71・4人に上り、いずれも政府の分科会が示す四つの区分で最も深刻な「ステージ4(感染爆発)」の基準を超えている。4月以降の新規感染者の約半数が30代以下だった。
県は4月下旬以降、飲食店への時短要請など独自の対策を取ってきたが、感染再拡大の勢いはむしろ強まっている。県のこれまでの対応を問われた服部氏は「批判は受け止める」としつつ、「県内各地域の感染状況に開きがあり、状況を分析しながら適切に手を打ってきた」と強調。一方で、現在、感染の約8割を占める変異株は感染力が強いなどとして「従来型による(感染)状況の見込みと差が出てきている」とした。(神野勇人、松沢拓樹、山田佳奈)
新型コロナウイルスの感染拡大で新たに緊急事態宣言に追加されることになった福岡県。飲食店や商業施設、交通機関はどう対応するのか。
ファミリーレストランのジョイフルは、先行して緊急事態宣言が出た東京や大阪など4都府県の全店で、アルコールの提供を終日取りやめ、午後8時に閉店している。福岡県内にある約100店の対応は「まだ検討中だが、要請に従う方針」だ。定食店のやよい軒も「要請に沿って対応する」。ただ、断続的な時短要請で、外食業界は痛手を負っている。ある外食チェーンの関係者は「またかという思いはある」とこぼす。
前回の宣言時に閉店時間を1時間繰り上げた、百貨店の岩田屋三越は「検討を始めたが、最終的には政府や県の要請を踏まえて決める」。博多阪急、大丸福岡天神店、井筒屋の各百貨店も要請の内容次第としている。
商業施設のキャナルシティ博多の飲食店では4月22日から県の要請に基づき、時短営業を実施している。施設の運営会社も「内容を見て対応を検討する」。アミュプラザ博多とリバーウォーク北九州も同様だ。
東京都などでは床面積1千平方メートルを超える大型の百貨店は休業要請の対象となったが、宣言の延長に伴い休業要請は緩和される見通しだ。ある百貨店の関係者は「要請よりさらに営業時間を短縮したり、催し物の開催について変更したりする可能性は十分ある」と話し、営業への影響は避けられないとみている。
JR九州は要請を受け、筑肥線の福岡空港―筑前前原間で計4本の減便を決めた。これに伴い終電も繰り上げる。西日本鉄道は高速バスの一部の路線で運休や減便を決めた。(松本真弥)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル