福岡県警初の女性副署長 「女性初」に疑問 「いろんな働き方できるよう」

島崎周

 福岡県警八幡東署の副署長、山本幸さん(48)が、昨年9月に県警で初めての女性副署長に就任した。後進の多くの女性警察官が今後、幹部として活躍できるよう「道を広げていくきっかけになれたら」と意気込む。

 学生時代は、周りを引っ張っていくリーダー気質を買われ、学級委員や部活のキャプテンを務めた。社会と関わりたいとの思いから警察官を志し、1998年に県警に採用された。入校した警察学校でも、まとめ役の副総代に選ばれた。

 総務や警務、交通、刑事など幅広くキャリアを積んできた。自身のキャリアアップについて意識するようになったのは30歳の頃。署の留置管理係で係長となり、初めて部下を指導する立場に。チームをまとめて目標を達成することにやりがいを感じた。さらに上の立場で、仲間といい仕事をしてみたいと思うようになった。

 36歳で早良署の刑事課長に就任。印象に残っているのは2009年10月、福岡市の寺院「油山観音」で、国指定の重要文化財の仏像が盗まれた事件だ。仏像は売られるなどして県外に流出していたが、発生から2カ月後には窃盗容疑などで会社員の男を逮捕、その後、男の仲間も逮捕した。仏像は地元で大切にされていたもので、寺に返すことができた。住職らからの感謝の言葉を聞き、警察官冥利(みょうり)に尽きると感じた。

 署の刑事課長など、県警内で数々の「県警女性初」を歴任。しかし一方で、女性が就任するだけで「初」とニュースになることには疑問を感じてきた。「女性幹部も、その前任の男性幹部も、経歴や能力は同等なはずなのに」

 警部、警視の昇任試験の時期は30~40代が多い。自身は独身だが、周囲にいる同僚の女性たちで、結婚や出産、子育てといったライフイベントとぶつかり、仕事を辞めたり、希望の所属をあきらめたりする人の姿も見てきた。

 近年では県警も一層の女性の活用に向けて、長く働ける環境づくりに力を入れている。だが「子育てや介護シングルマザーなど、家庭に事情を抱える人が多様な働き方を選択できるよう、さらに整備が必要だ」と話す。

 現在は、副署長として日々、各課からの報告を受けて調整や助言をするなど、署全体を見渡す立場。生き生きと活躍する部下の姿を見るのがやりがいだ。「現場で働く部下たちを支え、一緒に働いて楽しいと思ってもらえるような職場環境をつくりたい」と話す。(島崎周)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment