東京電力福島第一原発事故から、まもなく9年を迎える。福島県の漁師たちは放射性物質の安全基準をひとつひとつクリアしながら、「試験操業」を続けてきた。なお風評は残るが、消費者と信頼関係を築きながら本格操業につなげようとの試みが出てきた。
福島県郡山市にある小さなレストラン「ラ・ギアンダ」に1月下旬の昼前、とれたての魚が届いた。
拡大する「ラ・ギアンダ」に届いたばかりの魚を、店長の加藤智樹さんが見せてくれた=2020年1月21日、福島県郡山市、菅沼栄一郎撮影
前日の夕方、約100キロ北東にある同県相馬市の漁港に揚がったばかりの鮮魚だ。シェフの加藤智樹さん(42)はさっそく夜のメニューを考える。ホウボウはカルパッチョに、マダコは近所の農場のハーブを添えたサラダにするか……。
拡大する相馬に揚がったばかりの鮮魚を使った料理を提供している「ラ・ギアンダ」の加藤智樹店長(右)=2019年12月25日、福島県郡山市、菅沼栄一郎撮影
沖合底引き網漁船「清昭丸」の船主、菊地基文さん(43)との取引は、もう3年になる。「最近は、清昭丸の魚が届く日に席を予約する常連さんも増えました」と加藤さん。
福島県の水産物は検査で安全性が確認された魚種に限って試験操業を続けているが、漁獲量はなお震災前の2割以下にとどまる。
ただ、事故の直後に出荷制限された魚種が44だったのに対し、昨年末には1種だけになった。「常磐(じょうばん)もの」として評価が高かったヒラメの出荷制限は2016年6月に解除され、18年度には東京都中央卸売市場での価格が全国平均の9割まで回復した。
現在、試験操業の船は週に2~…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル