力丸祥子
福島大生を対象に、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に関する知識を調査したところ、時間の経過とともに平均点が低下したことが明らかになった。調査チームは「『風化』は確実に進行している。社会全体で知識を伝えていく必要がある」としている。
調査は2019、21、22年度、一般教養を学ぶ同大の授業「ふくしま未来学入門Ⅰ」の出席者が受けた。対象者は計968人で、うち8割以上は入学したばかりの1年生だったという。設問は「福島第一原発でつくられた電気の供給先」や「風向きの影響で多くの放射性物質が降り注いだ方角」など全20問。3回とも同じ内容で、五つの選択肢から選ぶ方式だった。
結果は、20点満点中、平均点は19年度が9・5点、21年度が8・6点、22年度が8・1点と推移。年を追うごとに、知識が減っていることが示された。学生の出身地別の3回の平均点は、福島が9・4点で、ほかの東北地方や、東北以外の国内と比べて高かった。
多くの設問で正答率が下がる一方で、「シーベルトは何を表す単位か」や「放射性物質セシウム134の半減期はどのくらいか」などの問いでは正答率が上昇した。研究チームは明確な理由は不明としつつ、「(原発事故後に県教委などが取り組む)高校までの放射線教育が一定の成果を上げている可能性がある」とみる。
研究チームの前川直哉准教授(教育学)は「忘れること、なかったことにすることが『復興』ではない。震災や原発事故の被害を含めた知識や経験、教訓を学び、福島から国内外に伝えることが人類の未来にとって重要だ」と話した。(力丸祥子)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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