JR福島駅(福島市)で、東北新幹線と山形新幹線の連結・分離をスムーズに行うための工事が本格化している。福島駅と山形方面をつなぐアプローチ線を1本から2本に増やし、「渋滞」が起きないようにする。同駅のダイヤの乱れは東日本全体の新幹線運行に影響を与えかねず、「山形新幹線の開通直後からの課題」(専門家)が解消されることになる。
福島駅は、東京―新青森の東北新幹線と、東京―山形をつなぐ山形新幹線が交差する拠点で、「やまびこ」と「つばさ」の連結と切り離しが行われている。
だが現在は、山形新幹線が福島駅に出入りするアプローチ線は、下り線ホームにつながる1本のみ。そのため、山形新幹線は上りでも下り線ホームを通らざるを得ない。
東北新幹線の上りも山形新幹線と連結するため、福島駅の下り線ホームに入る必要があり、その移動のために東北新幹線の下り線路を2回も経由する「平面交差」が生じている。
こうした複雑な構造のため、新幹線の発着や接続・切り離しが遅れれば、福島駅で追い越しを行う「はやぶさ」をはじめ、ダイヤ全体に影響してしまう。さらに、東京―大宮間は東北と上越、山形、秋田、北陸の五つの新幹線が同じ線路を走ることから、金沢や新潟行きの新幹線のダイヤも乱れるなど影響は大きい。
実際、2019年4月26日には、福島駅で下りのやまびこ・つばさを切り離した際、先頭のつばさに車両不具合が発生。上下線の新幹線が福島駅の前後で詰まり、最大約3時間の遅れが生じた。
公共交通に詳しい福島大の吉田樹准教授(交通工学、土木計画学)は「福島駅でのダイヤの乱れが、東日本全体の新幹線の運行に影響を与える。特に冬は雪の影響でダイヤが乱れやすい。(新たなアプローチ線の建設は)1992年の山形新幹線の開通直後からの課題だった」と指摘する。
JR東は北海道新幹線が札幌に延伸する30年度ごろに国内最速の時速360キロ運転の営業車両の導入を目指している。アプローチ線の増設で福島駅での「混雑」が解消できれば、高速化に合わせたダイヤもより組みやすくなる。
アプローチ線の増設はかねて課題とされてきたが、在来線が地上、新幹線が高架という福島駅の構造や、線路をまたぐ道路や電柱など既存の構造物などの制約からなかなか着手できなかった。今回、JRは精密な3Dの図面を作り、新たな線路と構造物の距離など安全性を細かく検討。線路の勾配やカーブを工夫し、東北新幹線の高架橋の下をくぐる形で計1・3キロ(地上部760メートル、高架部540メートル)の新たな上りのアプローチ線を建設することになった。
4月上旬から電気設備の工事を始め、5月には足場や仮囲いを設置した。高架橋の本体の建設は7月ごろから着工し、全体の完成は2026年度末の予定という。JR東日本仙台支社の広報担当者は「線路の新設は東北だけでなく東日本全体にメリットがある」と話す。(飯島啓史)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル