メディア空間考 原田朱美
有名な心理学実験がある。
被験者は、魚が入った水槽のアニメ動画を見せられる。しばらく眺めた後、自分が見たものを説明する。この時に話す内容が、日本人とアメリカ人では全然違うのだという。
第一声から違うらしい。
「池のようなところでした」と環境から話し出すのが日本人。「多分マスです。左に泳いでいきました」と中心にいる魚から話し出すのがアメリカ人。
日本人は、石や水草、泡、カエルなど、背景要素を答えた数が、アメリカ人より6割以上多かったそうだ。私もこの動画を見たが、第一印象は「魚の後ろの水草が大きいなあ」だった。
この実験は、リチャード・E・ニスベット著「木を見る西洋人 森を見る東洋人」に詳しく書いてある。文化の差で、物事のとらえ方がどう変わるのかを調べる「文化心理学」というジャンルだ。
専門の一橋大学の宮本百合教授に、話を聞いた。
欧米では、まず中心になるもの、しかもその属性を見るのだという。冒頭の実験で言うと、「魚は多分マス」とか、模様とか、魚が何者なのかをじっくり見ている。
一方、日本を含めた東洋人は…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル