イラストレーターのミカヅキユミさんは、重度の感音性難聴の当事者だ。
耳が聞こえる夫と9歳の長男、5歳の長女との日常を、エッセーイラストや漫画で記録してきた。
彼女には、今も忘れられない思い出がある。
かつて通った小学校では、自分の意思を伝える教育の一環で、日記をつけるよう言われた。
本を読むのも、文字をつづるのも大好き。毎日提出するノートに、先生がどんなコメントをつけてくれるか、わくわくしていた。
2年生のときのことだ。自宅のインターホンを押すと、室内に備え付けのランプが光って回ることを取り上げようと考えた。
「わたしは耳がきこえないのでランプを見て『おきゃくさまがきたんだな。』とわかります」
そう書いたが、後日返ってきたノートに目を通すと、赤ペンでこんな風に添削されていた。
「きこえにくいと書きましょう。難聴とも言うよ」
悩み抜いてとった行動
私の聞こえ方を、どうして訂正するの? 直さなくちゃダメなの……?
魂が傷ついたと感じるほどにショックだったが、大人の意見は正しいと思い込み、何も言えなかった。
そして悩み抜いた結果、意外な行動に出る。
「きこえにくい」は、絶対に納得できない。だから文章の修正を求められても、全部無視したのだ。
その後も何度か同じことがあったが、粘り強く続けると、指摘はなくなった。
当時の経験を漫画にして、今年4月上旬、ツイッター上で公開した。
子どもの言い分を、一方的に押さえつけてしまう大人の腕。それを「黒い手」と表現した点に、大きな反響が起きた。
しかし漫画には、実はまだ続きがある。
■涙を流して訴えた長女…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル