東京都内にある私立中学校の初年度納付金(入学金、授業料、施設費などの合計)の平均が、この10年で約5万5千円(約6%)増えたことが都の調査でわかった。都内の私学の経営事情に詳しい専門家は、首都圏での中学受験熱の高まりを背景に、教育の質向上のための値上げがしやすい環境になりつつあるとみている。
都によると、都内の私立中182校の2022年度の初年度納付金は、平均97万8420円。内訳は、授業料48万6976円(前年度比4808円増)▽入学金26万1174円(同1468円増)▽施設費3万5642円(同2239円減)▽その他、教材費など19万4628円(同4207円増)。
前年度から値上げしたのは35校で、据え置いたのは144校、値下げしたのは2校だった。初年度納付金の最高額は189万6500円、最低額は54万8千円だった。
10年前の2012年度の初年度納付金は、184校の平均で92万3644円だった。その後は8年連続で値上がりし、21年度には微減したものの、今年度は再び上がった。
一方、値段を長期間据え置いている中学もある。最長は28年連続の跡見学園で、これに、25年連続の和洋九段女子、文京学院大女子、大妻中野が続いた。
「需要が高まり、値上げできる環境整う」
都内の私学の事情に詳しい森上教育研究所の森上展安代表は「私立中には、高給で優れた教員を雇うなどして教育の質を高め、他校と差別化したい思いがある。値上げはそのための手段だ」と話す。
そのうえで、納付金が上がっていることについて「首都圏の中学受験者数が大きく増えるなど需要が高まっており、中学側にとって値上げできる環境が整いつつある」と指摘する。
森上代表によると、子どもを私立中に進学させる世帯には共働きなどで高収入の世帯も多く、教育内容や面倒見に魅力を感じれば値上げを許容しやすい傾向もあるといい、「近隣校との競争などで据え置かざるを得なかった学校の一部も、今後値上げに踏み切る可能性がある」とみる。(高浜行人)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル