秋田を代表する冬の味覚・ハタハタを沿岸の定置網で取る「季節ハタハタ漁」の漁船に15日夜、同乗した。資源保護のため、最大でも2週間程度しか本格的な漁ができない中での出漁日。網にかかった銀色の魚体はぴちぴちと跳ね、海水のしぶきを飛ばしながら目の前に降ってきた。
漢字で魚偏に雷と書くこともあるハタハタは、雷がとどろくような荒天のとき、海がかき混ぜられて水温が一気に下がると、秋田沖にやって来ると言われる。
雷まで鳴らずとも、冬の日本海の荒波に向けて船を繰り出すハタハタ漁には危険がつきもの。漁船に同乗して取材できたらと、これまで知り合った漁師数人にお願いしたが、「陸(おか)まではいいけど海はだめ」。記者の身を案じるがゆえの優しさで、乗船はかなわなかった。
知人を介し、まだ一度も会ったことのない男鹿市北浦の漁師、大坂谷忠義さん(68)に電話したのは15日昼のこと。大坂谷さんは、卵を産みにきた魚群を沿岸でとらえる季節ハタハタ漁師だ。産卵場となる藻が豊富な北浦の海に小型の定置網を仕掛け、ハタハタがかかるのを待つ。
まずは今期の漁の調子を聞くと、「全然だな」と不機嫌そう。同乗はやはり無理かと思いつつお願いしてみると、「ほかの人に決(けつ)とって、よかったらな」。この日は天候がよく、穏やかな航行が予想されるため、漁船「海新丸」に一緒に乗る船員たちの同意が得られれば、定置網から魚を取りにいく漁に同行しても構わないという。
「どうしても乗りたくて…」 親方6人に頼み込み
指定された午後7時半、漁師たちが寝泊まりする番屋へ向かった。
大坂谷さんが言っていた通り、漁協の裏側に、2階建てのアパートのような建物があった。番屋だ。
「海新丸」と書かれた2階の一室の戸を開けると、たばこのにおいに満ちた空間に、6人の男たちがいた。布団を敷いて寝ている人もいる。
「船に乗って取材したい」と…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル