憲政史上初めてとなる「立皇嗣の礼」が8日、皇居・宮殿で開かれた。秋篠宮さまが皇嗣になったことを宣言する国の儀式。当初は4月に開催される予定だったが、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で延期された。儀式について考える。
東京大学先端科学技術研究センターフェロー・御厨貴氏
今回の立皇嗣の礼は、異例とも言える。これまで立太子の礼として行われてきたこの儀式は、次の天皇を可視化させ、皇室の長い弥栄(いやさか)を見せるための儀式だった。しかし、皇嗣の秋篠宮さまは天皇陛下の弟であり、同世代。今の陛下が29年前に立太子の礼を迎えた際のように、秋篠宮さまが次の天皇として即位するという確定的な見方はできないだろう。今回の儀式は実態に照らして性格があいまいになっている。
皇室は皇族の減少が続き、公務の担い手や皇位継承者の数を十分に確保することが困難になりつつある。上皇さまが退位という、いわば身を捨てるような覚悟を固めたことで、皇室の未来に向けた議論を早められる可能性があった。
私自身、上皇さまの退位と天皇陛下の即位に一定のめどが付いた後、政府や国会が速やかに取り組んでくれるものと考えていた。だが、現時点まで、表だっての議論や動きはないとは予想外だった。
そもそも、私が天皇陛下の退位をめぐる政府の「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」(座長=今井敬・経団連名誉会長)で座長代理を務めていた頃、この立皇嗣の礼や秋篠宮さまの待遇については、検討が後手に回っていた。とにかく上皇さま(当時は天皇陛下)の退位を実現させるための具体的な課題を一つ一つ、テストの問題を解くようにしてなんとか検討を進めてきたからだ。
上皇さまの退位に関する議論が開始された当初は、秋篠宮さまが「皇太子」と呼ばれる可能性もあった。だが、途中で政府高官から、秋篠宮さま自身が「皇太子の称号を望んでおらず、秋篠宮家の名前も残したい意向だ」という趣旨の説明があり、皇位継承順位第1位の皇族であることを示す「皇嗣」という称号に落ち着いた。秋篠宮さまの真意は今もわからない。
皇室に関する議論は、国民の意…
2種類
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment