移動制限解除でも「展望見えない」 観光業の消沈続く

 北海道や首都圏の1都3県などでも、19日から県境をまたぐ移動が自由になる。だが新型コロナウイルスへの懸念は消えず、人の往来がすぐに戻ると考える人は少ない。基幹産業の観光が深刻な打撃を受けた北海道では、まず近場の客を呼び込もうとしている。

 「移動は自由、どんどん旅行してといわれても、そうはいかない。観光客はしばらく戻らないと覚悟している」。移動制限の解除を翌日に控えた18日、JR函館駅近くの函館朝市は人通りがほとんどなかった。乾物屋の店主は周りを見渡し、ため息をついた。旬の魚介類や野菜などを扱う約250店がひしめき、コロナ禍の前は威勢のいいかけ声が飛び交っていた。

 函館の場合、観光客の7割近くを訪日外国人を含む道外客が占める。函館朝市協同組合連合会の藤田公人副理事長は「札幌の『昼カラオケ』や東京の『夜の街』の問題もあり、多くの人が慎重になっている。観光が息を吹き返すまでには時間がかかる」と話す。

V字回復の見通したたず

 北海道にとって、移動制限の解除は朗報だ。だが、右肩上がりに増えてきた訪日外国人客はもちろん、国内客の「V字回復」は見込みづらい。そこで期待をかけるのが道内客だ。北海道は7月から、道民向けに道内旅行で最大1万円を補助する制度を始める。

 登別温泉は国内外から年間約400万人が訪れる。14館ある温泉旅館の多くが4月下旬から休業していたが、19日までにすべてが営業を再開する。登別国際観光コンベンション協会がかけあい、登別市は市民限定の8千円クーポン券を発行した。温泉ホテルを運営する「トーホウリゾート」の社長でもある唐神昌子会長は「まずは市民、道民へと安心感を広げていき、少しでも早く道外のお客様にも来てほしい」と話す。

 道内観光の拠点になる札幌市では例年200万を超える人が訪れる「さっぽろ雪まつり」が大幅縮小になるなど、集客を見込めるイベントの相次ぐ中止が重くのしかかる。センチュリーロイヤルホテルでは7月から、1泊朝食付き6千円からの道民限定割引プランを始めることにした。担当者は「地域をまたぐ移動はしばらくは活発にならない。これまで宿泊の機会が少なかった地元の方に楽しんでほしい」と話す。しかし、別の大手ホテル担当者は「明るい展望が見えない。観光業界が元気を取り戻すのは一体いつになるのか」と表情は暗い。(阿部浩明、西川祥一、長崎潤一郎)

閑散とした横浜中華街

 首都圏の観光地も、県境をまたいだ観光の再開を待っていた。横浜市中区の横浜中華街では、修学旅行生や観光客で通りが埋まる風景は戻っていない。

拡大する小物を並べる萬来行の従業員。客が来ない日もあるという=2020年6月5日午後0時13分、横浜市中区山下町、岩本修弥撮影

 カラフルなポーチや小物入れなど、約2千種類の雑貨が並ぶ中国雑貨店「萬来行(ばんらいこう)」。代表取締役の竹本理華さん(48)は「以前は制服姿の修学旅行生が大勢買い物に来てくれたのにすっかり見かけなくなった」。5月8日に営業を再開したものの、売り上げは感染拡大前の1割以下だという。

 横浜中華街発展会協同組合の高橋伸昌理事長によると、飲食店は約8割が営業を再開。遠方からやって来る人ほど土産を買うといい、「県外からの観光客や修学旅行生が中華街に戻ってきてくれることを祈っています」。(岩本修弥)

拡大する雑貨店「萬来行」では感染症対策として、透明のシートをつり下げている=2020年6月5日午後0時52分、横浜市中区山下町、岩本修弥撮影


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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