男性は家族6人と、それまで歩んだ「証し」すべてを1発の原爆に奪われた。あれから75年。いまも被爆前の自分の「証し」を捜す。心の穴を埋めるため、家族が眠る墓を訪れる。
9日朝。北村正人さん(87)=福岡市=は息子と一緒に長崎市街を一望できる高台の墓地にいた。原爆の犠牲になった実母と養母、きょうだい4人が眠る墓に駄菓子の詰め合わせを置き、手を合わせた。「きょうだいは、こんなお菓子を見たこともないからね」
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墓に納まる6人の骨は75年前、北村さんが拾ったものだ。当時12歳。長崎市立商業学校1年の北村さんは学徒動員で、爆心地から7キロほどの場所で穴を掘っていた。ものすごい光と爆風。敵を迎える陣地を作るために掘った穴に救われた。家族が心配で自宅に向かったが、近づけなかった。
翌日、爆心地から約500メートル離れた自宅は焼失していた。当時、伯母だった養母と2人暮らし。焼け跡には、養母の骨と裁縫箱とみられる金枠が残っていた。裁縫が上手な養母に、服を直してもらった。冬は一緒に布団に入り、冷たい足を太ももで挟んでもらった。「母ちゃん」と慕った。
隣の家には実母と、きょうだい4人の白骨があった。時々食卓を囲んだ家族。涙が止まらなかった。
人さし指ほどの大きさの骨を一…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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