京都女子大(京都市東山区)の学生が、空き家の所有者に代わって家の様子を定期的に確認する「空き家見守りボランティア」に取り組んでいる。自治会とも連携して空き家に再び住民を呼び込み、より安全な街をつくるのが狙いだ。
記者は1月25日、空き家見守りボランティアの訪問調査に同行した。メンバーは、家政学部の井上えり子教授とゼミ学生7人。大学近くの六原学区(同区)にある空き家を訪れた。井上教授が所有者から鍵を預かっており、毎月1回、中に入って調査している。
まずは窓を開けて換気。各部屋を回り、天井の雨漏りの跡が広がっていないかや、建具の傾きに変化がないかなどを確認していった。屋根瓦が落ちたり、植木が伸びたりして隣家に迷惑をかけていないかも重要なチェック項目だ。調査結果は、写真を添えた報告書の形で所有者に送る。
井上教授は、六原学区の空き家問題に2006年から関わってきた。清水焼のふるさととして登り窯や昔ながらの町並みが残るが、相続されても使われないまま放置されるなど、増え続ける空き家が地域の大きな問題になってきた。
同学区内の自治会でつくる自治連合会事務局長の菅谷幸弘さん(69)によると、約1800戸ある学区内の空き家率は市の平均(約13%)を上回る。コロナ禍前にはインバウンド(訪日客)の急増で民泊施設や簡易宿所が120軒もできたが、コロナ禍で経営が立ち行かず、空き家状態になっているところも出ている。
「放置されて危険な状態の建物もある。空き家が増えると防犯上も心配だ」と菅谷さんは言う。
自治連合会は12年に「まちづくり委員会」をつくり、空き家の所有者に呼びかけて活用の道を探ってきた。委員会には井上教授のほか、建築士や相続の専門家などが加わり、所有者からの相談に乗ったり、活用したいという意向があれば借家や地域の集会所に改装するプロジェクトを進めたりしている。
15年に始まった「見守りボランティア」も、まちづくり委員会の活動の一翼を担う。見守りをしていた家に雨漏りが見つかったのをきっかけに、所有者に改装して賃貸に出すことを提案。学生のアイデアで、通りに面した外壁を焼き物のタイルであしらい、若い世代の人が地域外から移り住んだケースもある。
見守りを続けてきた4年の水出喜穂さん(22)と高塚茉友さん(22)は、共同の卒業研究として空き家所有者へのアンケートをした。登記情報からは所有者が分からない空き家もあり、管理不全に陥りかねない。そんな空き家を増やさないためにも、所有者に地域の街づくり活動を知らせるなどの啓発が重要だと卒業論文にまとめた。
水出さんは「見守りボランティアの活動が地域の人の目にとまれば、空き家の活用を考える一歩につながる」と期待する。
井上教授も「空き家を通じ、『地域とつながっている意識』を所有者に持ってもらうことが重要。時間をかけて信頼関係を築いた上で、所有者が活用を考えようという時に、地域ぐるみでサポートできるようにしたい」と話した。(河原田慎一)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル