マンションやアパートの空き部屋が、不正薬物の密輸に悪用されるケースが相次いでいる。税関や警察が相次いで摘発しているが、氷山の一角とみられる。その手口には、高齢者を中心に多くの被害者を生んできた組織的な犯罪のノウハウが応用されている。
昨年9月、羽田空港(東京都大田区)にベトナムからの国際郵便で、三つのお茶の缶が届いた。東京税関の検査員が調べると、フタが二重構造になっており、そのなかに不正薬物のMDMAやケタミンが隠されていた。送り先は板橋区内のアパート一室。誰も住んでいない空き部屋だった。
警視庁は、この部屋で不正薬物を受け取る役割だったとして、ベトナム国籍の留学生の男(28)を麻薬取締法違反などの疑いで逮捕。男はこの部屋の元住人で、退去した後も合鍵を持っていたという。
捜査機関に薬物授受を把握されないよう、一般の荷物を装って宅配便で送られた薬物を受け取る場所として、密輸グループが利用していたと警視庁はみる。メンバーの関係先を送り先にすれば足が付きやすい。その点、誰とも契約関係にない空き部屋は、格好の「空間」となる。
この荷送りの手口は、2010年代に特殊詐欺グループが詐取金の受取場所として悪用し、広がった。
不正薬物密輸での応用が目立つようになったのはこの数年のことだという。東京税関によると、薬物密輸を空き部屋に送る手口は、税関が認知できた範囲でこれまでは年数件だったが、昨年は約50件に急増。背景にあるのは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う水際対策の強化だ。運び屋の入国が難しくなり、国内の協力者に郵便物を受け取らせる手口にシフトしていった可能性があるという。
密輸では検査の目をかいくぐろうと、薬物を小分けにして複数の宛先に同時に送る手口が主流。実際に悪用されている空き部屋の数は、税関の把握よりはるかに多いとみられている。
不動産会社などが管理しているはずの空き部屋が、なぜ悪用されるのか。
不動産業界や税関の関係者に…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル