編集委員・伊藤智章
戦時中の空襲などで被害を受けた民間人の救済立法が実現しないなか、名古屋市は今年度、独自の「民間戦災傷害者援護見舞金」を10万円に増額した。戦後76年。被害者の高齢化に加えて、多くの人が亡くなって対象者が減ってきたことが背景にある。
名古屋市北区の脇田弘義さん(83)は1945年5月の名古屋空襲で手足や顔を大やけどし、両足が不自由で立って歩くことができない。自宅で洋服仕立業を営み、子どもを育てた。3年前に脳血栓で倒れ、いまは妻の助けで自宅で生活している。
最近、同市から見舞金増額の通知が届いた。「涙が出た。うれしかった」。救済立法を求める運動を続ける全国戦災傷害者連絡会(全傷連)結成当時からの会員だ。当時は若手。毎月のように会合があり、子連れでよく参加した。しかし仲間のほとんどは亡くなり、いまは連絡もない。
「本当は国が法律を作ってほしいが、なかなか難しいらしい。でも杉山さんはよくやってくれた。その成果だ」と感謝する。
いまも空襲当時のことは忘れ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル