乙武洋匡氏(作家、元東京都教育委員):効果と副作用とを天秤にかけて考えていくべきだが、効果はもちろん、副作用についても、政府がきちんと把握できていたのかが疑問だ。会議の映像を見ても、子育てをしてこなかった世代のおじさんしか映っていない。今回の意思決定をした人たちの中に、思いを馳せることのできた人がどれだけいたのだろうか。
駒崎弘樹氏(NPO法人フローレンス代表):新型コロナウイルスについて中国が出した4万5000人分のデータでは、基本的に50代以上の方々、特に基礎疾患をお持ちの方々が重篤化しやすく、0歳~9歳までの死亡者数はゼロで、19歳まで広げてみてもほとんどいない。まずは高齢者の対策、満員電車や企業の対策をした上で学校、順番というのであればまだ分かる。何を防ごうとしているのか。筋が通っていないと言わざるを得ない。一日の食事のうち、給食が最も栄養価が高く、それによって生きているという子どもたち、あるいは虐待家庭や養育不全家庭で、学校があることで救われている子どもたちがいる。それが1カ月もの間、ずっと家にいることのリスクもある。確かに休校によって感染のリスクは減るかもしれないが、他のリスクは考えなくてもいいのか。
宇佐美典也氏(コンサルタント、元経産官僚):駒崎さんのおっしゃるとおり、今回のことで困ってしまう人が出てくるのは確かだ。ただ計算上、このペースで感染者が増え続ければ、3月中には重症者を受け入れる感染症病床のキャパを超え、が詰んでしまう可能性がある。だから少しでも増加率を抑えるために、多少強引にでも社会の動きを止めに入らないといけない。そして制度上、学校が最も止めやすい。そして政府は今回“子どもたちのために”と言っているが、現実的には社会を2、3週間だけ止めに入っているんだと思う。もっと言えば、そもそも政府には一斉に休校にさせる権限がない。本当に武漢のようになってしまい、電車も止めないといけない、というような事態になった場合を想定し、こうした要請を行い、自治体がそれに応える、というプロセスの実験をしているのではないか。
駒崎:宇佐美さんの現状認識はよく分かる。ただ、打ち手としては最悪だった。僕が経営しているクリニックでも、医師や看護師の中には今回のことで働けなくなるという人が出てきている。医療のキャパを広げなければいけない時期に医療者や福祉の職員たちが働けなくなるというのは合理的な判断だろうか。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース