突然届いた茶封筒、芸術家の背を押した小3「あつ生くん」の自由研究

 15年前の冬のある日、神奈川県箱根町の美術館で働いていた橋本公(いさお)さん(64)の元に茶封筒が届いた。中の手紙に、こう書かれていた。

 友人のお子さんの「自由研究」です――。

 何のことだろう。

 同封されていたのは「かく実験 3年3組小原あつ生」と書かれた冊子。ページをめくって、あの作品のことだと気づいた。

 橋本さんは、子どものころから絵を描くのが好きだった。

 大学を卒業した後は銀行で17年間働いたが、父が亡くなったことなどをきっかけに「このままでは死ぬとき後悔する」と考えて退職した。41歳で武蔵野美術大学(東京都)の造形学部に入った。

 2年後の2003年に、卒業制作で「1945―1998」と題した映像作品を発表した。

 作品では、世界各地で行われた核実験を示す光が、電子音とともに世界地図上で点滅していく。1945年以降の2千回以上を14分にまとめ、広島・長崎への原爆投下もそこに含めた。無数の民間人を犠牲にした「実験」だと考えたからだ。

 作品は世界的に注目され、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会の公式YouTubeでも紹介された。

再生回数は51万回を超す。(https://youtu.be/cjAqR1zICA0?si=s9bwfM5_2kuH_yIM

見知らぬ君に伝えたい、「連絡ください!」

 発表の5年後に橋本さんの元に届いた「自由研究」も、白地図に核実験の場所が落とし込まれていた。「あつ生くん」は前文にこう書いていた。

 「(橋本さんの作品を)見た…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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