すり鉢状の競走路(バンク)を自転車で滑走し、順位を競う競輪。その着順を予想して購入する「車券」の売り上げが近年、持ち直している。競輪場への入場者数は減り続けているのに、いったい何が起きたのか。
地方自治体が運営する競輪事業の売り上げは、1991年度の1兆9553億円をピークに減少の一途をたどってきた。だが、2013年度の6063億円を底にして17年度まで毎年増え、18年度も増収の見込みだ。一方で、入場者数は低迷している。17年度は1日あたり1499人で、08年度の6割にまで落ち込んだ。
長らく減っていた車券の売り上げが持ち直したのは、11年から始まった「ミッドナイト競輪」が大きな要因だ。午後9~11時ごろに開催されるレースで、競輪場に観客を入れないのが特徴。車券は主にインターネット上で販売し、レースの模様も専用チャンネルや動画配信サイトで中継する。ネットにさえつながれば、自宅などにいても観戦と投票が楽しめる。「無観客」のため、近隣への騒音対策にもなり、運営コストも削減できるという。
各地の競輪場でミッドナイト開催が広まった。経済産業省によると、14年度に約120億円だったミッドナイト競輪の売り上げは、18年度には約700億円まで伸びると試算される。競輪選手を減らしたり、平日昼間にしていたレースを土日やミッドナイトに振り替えたりすることで、収益が安定してきた。
ただ、こうした変化のあおりを受けた事業者も出ている。東日本を中心に場外車券売り場を運営する花月園観光(横浜市)は、車券のインターネット投票が盛んになるにつれて売り上げが減少。11月には東証2部の上場廃止に追い込まれた。(久保田侑暉)
メモ ミッドナイト競輪は、午後9~11時ごろに観客なしで開くレース。中継や車券の購入は、インターネットを通じてする。周回数を少なくしたり、通常より出走人数が2人少ない7車立てでレース予想をしやすくしたりしている点でも支持を集めている。(知っとこ!DATA)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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