大学生がプロの監督や俳優の指導を受けながら、映画制作に関わる取り組みが秋田市で進んでいる。俳優の竹中直人さんと漫画家の大橋裕之さんが監督を務める短編映画の撮影に、市内の学生が助監督補助として参加。経験を生かして学生だけでの作品作りにも挑戦する。
秋田市内で17日、竹中さんや大橋さんが記者会見し、秋田での制作にかける思いを語った。俳優や映画関係者らが立ち上げた短編映画制作プロジェクト「ミラーライアーフィルムズ」と、若者の流出を防ぎたい秋田市が連携することで実現した。秋田公立美術大や国際教養大など市内5大学から学生34人が参加。竹中さんと大橋さんを監督に迎えた作品と、学生が脚本から携わる3作品をつくる。
竹中さんの映画にはお笑いコンビ・スクールゾーンの橋本稜(りょう)さんや俵山峻さんらが出演。大橋さんの作品には又吉直樹さんや山田孝之さんらが出演し、17日までに市内での撮影を終えた。学生はその撮影現場で映画作りのノウハウを肌で学んだ。
今後はワークショップを開き、プロの指導の下で学生らで脚本の作成や撮影、編集などを担い、秋田市を舞台とした作品を手がける。完成後、竹中さん、大橋さんの作品とともに来年3月に市内で公開される予定だ。4月以降、全国でも上映されるという。
17日の記者会見では、竹中さんが「大雨(の被害)で撮影できないのではと思ったが、秋田の人たちのパワーで実現できた。きれいな空や空気、人びとのエネルギーに触れられ、夢のような時間だった」とあいさつ。大橋さんも「秋田のまちが、どこもかしこも魅力的だった」と語った。
市は企業版ふるさと納税で集めた約4500万円をこの取り組みに充てた。映画制作を通じて秋田の魅力を知ってもらい、学生に秋田に残って活躍する道を考えてもらう狙いがある。
秋田公立美術大3年の田島陽(ひなた)さん(21)は「貴重な体験ができた。映像業界に進みたいので、この経験を生かしたい」と話していた。(井上潜)
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〈ミラーライアーフィルムズ〉映画プロデューサーの伊藤主税さんや、俳優の阿部進之介さん、山田孝之さんらが2020年に立ち上げた短編映画制作プロジェクト。年齢や性別、職業、若手・ベテランといった垣根を越えた映画作りを掲げる。制作された短編映画は21年の「シーズン1」を皮切りに、22年の「シーズン4」まで公開された。地域と連携した参加型プロジェクトも目指している。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル