京都市内の創業100年を超える老舗店を紹介するカルタができた。京都芸術大(京都市左京区)の学生たちが、一店一店に経営の秘話をインタビューして作り上げた力作。遊びながら奥深い京都を知ってもらいたいという。
「京都100年かるた」は取り札が50枚。菓子やうちわ、呉服など、さまざまな業種の老舗50店を特徴づける商品のイラストと、店名の頭文字入りだ。読み札には、店の始まりや、店主が大事にしている信条を盛り込んだ歌が記された。
大正初期創業で、どんぶりを覆うほどの卵焼きがのったうな丼で知られる「京極かねよ」(中京区)の読み札は「火事の時 金よりタレを 守り抜く 滋味きんし丼」。戦前に火災が起きたときの逸話だ。
応仁の乱の勃発より2年早い1465年創業のそば店「本家尾張屋」(同区)は「はじめ菓子 禅が育てた 御用蕎麦(そば)司 寶(たから)の暖簾(のれん) 本家尾張屋」。菓子屋として始まり、創業200年を超えたころ、禅僧のためにそば作りを始めた歴史を句にした。
1818年創業の棕櫚(しゅろ)専門店「内藤商店」(同区)は「ほこりある 箒(ほうき)ぶら下げ 二百余年 看板いらず 内藤商店」。看板がなく、店が長年愛されてきたことへの驚きを表した。
カルタづくりが始まったのは4年前。京都芸術大空間演出デザイン学科の酒井洋輔准教授(40)が「京都のガイドブックや観光情報は多くあるが、表層的ではない京都の魅力を発信したい」と思い立った。
京都の伝統文化の情報を発信する学内機関「京都伝統文化イノベーション研究センター」に所属する学生が制作の中心となり、一軒一軒歩いて店を探したという。100年超えの店はネットに情報が出ていないことも多いからだ。
制作に関わり、今春に卒業した溝部千花(ちはな)さん(22)は「普段通ってきた場所にこんなにたくさんの老舗があったとは」と驚く。酒井さんは「知ることで住んでるまちへの愛着も育まれる。京都の街歩きが楽しくなるカルタに仕上がった」と話す。
初回試作300セットを「京都岡崎 蔦屋書店」で販売しているほか、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」に返礼品として掲載される予定。税込み4290円。問い合わせは酒井さんが社長を務める雑貨企画販売会社CHIMASKI(075・744・6152)へ。(高井里佳子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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