四国各地で「地域の顔」として歴史を刻んできた木造の鉄道駅舎が次々と取り壊され、アルミ製の簡素な施設へと姿を変えている。鉄道事業の赤字が続くJR四国がコスト削減策として進めており、すでに13駅が建て替えられ、さらに61駅について自治体と協議中だ。反対運動が起きるなど、地元の駅のあり方をめぐって議論が起きている。
「町の玄関口が寂れたら、町のにぎわいがなくなる」
昨年12月22日、徳島県東みよし町役場で、徳島線阿波加茂駅の駅舎の取り壊しに反対する846人分の署名を、住民有志らが松浦敬治町長に提出した。
阿波加茂駅は人口約1万3千人の東みよし町を代表する駅で、特急「剣山」やトロッコ列車も停車する。山小屋を思わせる木造駅舎は1914年の建築だ。
築百年を超える駅舎を撤去し、簡素な施設に建て替えるJR四国の計画を住民らが知ったのは昨年2月。代表の不動産業、三宅聡さん(83)によると、一昨年、同様に百年以上の歴史を持つ近くの阿波半田駅の木造駅舎が撤去され、バス停のように三方囲いと屋根だけの待合室に姿を変えたことから、反対が広がったという。
阿波加茂駅は2010年から駅員が配置されない無人駅だが、駅事務室を町がJRから無償で借り受けて改修。生け花や刺繡(ししゅう)などサークル活動の場として提供してきた。三宅さんは「駅舎がなくなると地域住民の生きがいの場もなくなる」と訴える。一方、松浦町長は取材に「建て替えはJRの事業なので、やむを得ないと思う」と話した。
駅舎の簡素化は、故郷を離れた人たちにも衝撃を与えている。
■帰省して言葉を失う人も…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル