海上自衛隊鹿屋航空基地(鹿児島県鹿屋市)への米軍無人機「MQ9」の配備計画をめぐり、九州防衛局は27日、市側に一時配備を検討していることを伝えた。今後、現地調査に入りたい意向を伝える一方、配備の機数や時期、期間などについてはいずれも「未定」とした。
防衛局の遠藤敦志企画部長ら幹部はこの日、鹿屋市役所を訪れ、郷原竜児市長公室長らと非公開で面会した。南西諸島周辺での警戒監視活動の必要が高まっているとして、「無人機を配備する初期的な検討の中で、地理的な観点などから鹿屋基地が最適と判断した」と説明した。現地調査を調整しており、調査に際しては改めて市側に要請すると伝えた。
関係者によると、米軍は7機前後のMQ9を早ければ今春以降に鹿屋基地に配備し、1年程度運用することを想定している。運用のために米軍関係者ら約100人が駐留する見通しだが、面会ではこうした具体的な計画については「調査をしないと決まらない」と明らかにしなかった。
恒常的な配備に発展する可能性を問われると、防衛局側は「現時点においては一時的な配備のお願い」と強調した上で、「様々な事情の変更の中で仮にそうなった場合には、丁寧に説明していくということが大前提」と述べた。
鹿屋基地は2019年から米軍岩国基地(山口県)に駐留するKC130空中給油機の訓練の一部移転を受け入れており、中西茂市長は「これ以上の米軍訓練は受け入れない」と発言してきた。
市側がこうした市長発言への認識をただすと、防衛局側は「そうした旨の発言があったことは承知している」と応じたという。防衛局幹部は取材に対し、「今回お願いする無人機の一時配備が市長のお考えの中でどう位置付けられるか、今後確認していきたい」と述べた。
郷原氏は面会後、「初めての説明だったので内容を精査して疑問点を伝えていきたい」と報道陣に話した。
市役所前で抗議活動をしていた「鹿児島に米軍はいらない県民の会」の下馬場学さんは「日米地位協定のもと、政府がものを言うことができない米軍が駐留することは許せない。米国の要請にひたすら従う政府に強く抗議する」と訴えた。(奥村智司、稲野慎)
MQ9は米ジェネラル・アトミクス社製の無人機で、攻撃型と偵察型がある。防衛省関係者によると、鹿屋基地に一時配備を検討しているのは偵察型という。中国が海洋進出を強めるなか、尖閣諸島(沖縄県)を含む南西方面の警戒監視を強化する狙いだ。
日本の海上保安庁も2020年にMQ9の偵察型を使って実証実験した。全長11・7メートル、幅24メートルのプロペラ機で、鹿屋基地に配備するのも同タイプとみられる。
米軍はこれまでも日本国内で無人機を運用してきた。2014年には三沢基地(青森県)で、17年には横田基地(東京都)で無人偵察機「グローバルホーク」の運用を開始した。いずれも1年のうち数カ月運用している。
だが、自衛隊基地に配備するのは今回が初めて。防衛省は、近接する馬毛島(鹿児島県西之表市)でも米軍訓練移転とそれに伴う自衛隊基地整備を進めており、南西防衛に日米が連携して取り組む姿勢が改めて鮮明になった格好だ。
鹿屋基地では24時間態勢で無人機を運用する見通し。米軍関係者の住居や周辺への影響など地元自治体との調整事項は山積みだ。(松山尚幹、成沢解語)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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