岐阜県美濃加茂市特産の高級干し柿「堂上蜂屋柿(どうじょうはちやがき)」の生産技術を、映像で記録して残そうというプロジェクトが進んでいる。取り組むのは、生産者団体の堂上蜂屋柿振興会(三輪宣彦会長)と美濃加茂市、「JAめぐみの」の3者。次世代に干し柿作りの文化・技術を引き継ごうという試みだ。
堂上蜂屋柿は、60度前後の高い糖度、大きさ、あめ色の美しさを誇り、平安時代には朝廷に献上されていたと伝わる。最高級品は10個入りで2万円もの値がつく。台湾に出荷した実績もある。
高級品だけに、手間がかかっている。皮むきは手作業。四角い柿のへた周辺は丸く、角のある部分は縦にむく。天日干しも雨を避けるため、ほぼつきっきりの状態になる。
昨年、同市蜂屋町の生産者で振興会副会長、坂井道夫さん(73)方の作業場で撮影があった。プロジェクトでは、頭部に装着して手元を映すスマートグラスという撮影機器を使った。11月に「皮むき」作業、12月は「手もみ」や「ホウキがけ」「天日干し」「出荷前点検」を撮影した。
12月の撮影では、坂井さんが柿の硬さや形状に応じた「手もみ」や「ホウキがけ」の要点を説明しながら作業した。
大学職員を定年退職後、本格的に生産に取り組んだ坂井さんは、例年約2千個の干し柿を作ってきた。「一つ一つ、柿の顔を見ながらの手作業。機械生産とは違うので、柿に合った手もみとか、ホウキがけとか、柿に合った力の加減が必要」と話す。
市は、坂井さん以外の生産者の映像の撮影も検討。さらに、柿の木の剪定(せんてい)を含めた良品な柿づくりのための栽培技術の集積を検討している。振興会会員の技術研鑽(けんさん)のほか、干し柿生産の教材として活用する考え。
振興会に所属する生産者は約60人。40代から80代と高齢化や担い手不足が懸念されている。市農林課の坪井勤課長(53)は「完成すれば、速やかに技術伝承ができるようになり、新規参入のハードルが低くなるのではないか」と話す。(吉田芳彦)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル