「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん(当時77)が2018年5月に急性覚醒剤中毒で死亡した事件で、和歌山地検は19日、元妻の須藤早貴(さき)容疑者(25)を殺人と覚醒剤取締法違反(使用)の罪で和歌山地裁に起訴した。認否は明らかにしていないが、関係者によると黙秘しているという。
起訴状によると、須藤容疑者は18年5月24日夜、何らかの手段で野崎さんに致死量の覚醒剤を口から摂取させ、死亡させたとされる。
野崎さんは自宅の寝室で倒れているのが見つかり、死亡が確認された。死因は急性覚醒剤中毒だった。遺体に注射痕はなく、県警は覚醒剤を口から摂取させられたとみて捜査してきた。
県警は、野崎さんが死亡した日の午後、家事手伝いの女性が夕食を作って外出した後は4時間ほど、須藤容疑者と2人きりだったとみている。ほかに覚醒剤を飲ませることができた人はいないと判断し、今年4月28日に須藤容疑者を殺人などの容疑で逮捕した。
県警は任意提出を受けた須藤容疑者のスマートフォンの解析から、須藤容疑者が田辺市で覚醒剤密売人グループと接触したことも把握した、としている。
和歌山地検幹部は起訴後、朝日新聞の取材に「捜査を続けて起訴できる証拠が集まった。逮捕後に新たな証拠も見つかっている」と説明した。
須藤容疑者が野崎さんに覚醒剤を飲ませたという直接的な証拠は出ていないが、地検は状況証拠の積み上げから、野崎さんを殺害することができたのは須藤容疑者のほかにありえないと判断し、起訴に踏み切ったとみられる。
和歌山県警は19日、須藤容疑者を詐欺容疑で再逮捕した。関係者への取材でわかった。
関係者によると、当時19歳だった須藤容疑者は「知人女性にけがをさせて慰謝料などを求められている」とうそを言い、札幌市の知人男性(67)から16年1月に約1170万円を須藤容疑者の口座に振り込ませ、だまし取った疑いがもたれている。須藤容疑者はこの容疑についても黙秘しているという。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル