紅白=男女対抗は変わるのか 性的少数者から疑問、制作側の本音は

 女性は紅組、男性は白組。戦後日本で大みそかの風物詩に定着したNHK紅白歌合戦は、この男女の対決形式を70年間続けてきた。だが出演者を制作側の意向で男女に分ける従来の方式は、性的少数者の人権侵害を助長するという指摘もあり、制作側もここ数年は対戦形式を変えた場合の検討もしているという。「紅白=男女」はいずれ変わるのだろうか。

2018年の紅白歌合戦=東京・渋谷のNHKホール、池田良撮影

 「紅組と白組の分け方も、すっごく研究したんです。そもそもどういう分け方があるのか、分けないほうがいいのか……」

 今年の紅白について、制作統括を務めるNHKの一坊寺(いちぼうじ)剛(ごう)さん(46)はそう明かした。

 現在の男女別の分け方は、敗戦の1945(昭和20)年の大みそかに放送された前身の「紅白音楽試合」で採用され、今の名前になった51年の第1回からも基本的に変わっていない。

1952年1月3日の第2回紅白歌合戦で司会をする(左から)藤倉修一と丹下キヨ子。椅子に座っているのは出番を待つ紅組の出場者たち=NHK第1スタジオで

 なぜこの分け方になったのか。「紅白歌合戦と日本人」の著書がある社会学者の太田省一さん(61)によると、「男女平等」の理念が立脚点だったという。

 軍国主義からの転換を図る中で「民主主義的な男女平等の考え方を音楽番組という形で表現したのがそもそもの始まり」だったという。

 太田さんは「『世の中には男と女がいて、みんなどちらかに属するはずだから、紅組と白組のどちらかを応援するでしょう?』というのが昔のセクシュアリティー観でした」として、かつては男女対抗形式が紅白の盛り上がりを支えた部分もあったと見る。

男女の組分けはNHKが決定

 もちろん当時からずっと性的少数者はいたが、「テレビで配慮が足りない部分があっても大きな問題にはならなかった時代でした」。

1986年の紅白歌合戦で歌う田原俊彦さん

 紅白では、男女混成のグループなどを除けば、事実上、社会的に認知されている男女の別で出演者を紅白に分けてきた。制作担当者によると、申し出がない限り、出演者本人の意思を確認することはなく、NHKが紅白の組分けを決めているという。

 性別を男女の二つで分ける社会規範は「性別二元制(論)」などと呼ばれ、議論の対象になってきた。見た目で性別を判断する問題点も指摘され、すでに欧州を中心に性的少数者に配慮した様々な改革が進んでいる。

 世界3大映画祭の一つ、ベルリン国際映画祭は2021年、「男優賞」「女優賞」を廃して「俳優賞」に統一した。英国を代表する音楽賞「ブリット・アワード」も、男女別の賞があったが、性別が男女どちらにも当てはまらないノンバイナリーであることを公表したサム・スミス(29)が男女区分をなくすよう提言したことなどを受け、22年からは男女の区分がなくなることが決まった。

2019年の紅白歌合戦で、紅組のトリを務めたMISIAさん。性の多様性の象徴であるレインボーフラッグが掲げられた=東京・渋谷のNHKホール、林敏行撮影

「シャットダウンされたような」「歌はそれを超える」

 英国でミスターやミズの呼称を避け「Mx(ミクス)」が定着したり、米国で性別欄にM(男)でもF(女)でもなく「X」と記されたパスポートが発給されたり、日本でも就職活動などで使う履歴書の性別欄に男女の選択肢を設けない様式例を厚生労働省が作ったりと、男女いずれかに当てはめない仕組み作りが定着しつつある。

記事の後半では、社会の変化の中で紅白の男女対抗形式が与える影響や、制作側が明かした別方式の検討についてお伝えします。

 性的少数者の当事者や出演者…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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