紙の本が持てない 足先で繰る電子書籍 読書バリアフリーが必要な訳

 「読みたい本を読めないのは権利侵害」――。7月に芥川賞に選ばれた「ハンチバック」の著者、市川沙央さんは受賞会見でそう述べ、「読書バリアフリー」の推進を訴えた。障害にかかわらず、誰もが読書できる環境をめざす「読書バリアフリー法」が施行されたのは4年前。取り組みはどこまで進んでいるのか。

 マウスに乗せた足の指先をわずかに動かし、パソコンの電子書籍のページをめくる。東京都江戸川区の日永(ひなが)由紀子さん(56)の読書の方法だ。読んでいるのは、カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」。

 25歳で筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患った。筋肉が徐々に衰える難病で、現在は腕や胴体、足、頭を自力で動かすことができない。

 まぶたを動かしたり、パソコンに文字を記したりして意思を示す。数十分ごとにたんの吸引が必要なため、24時間ヘルパーが付き添っている。

 福岡県久留米市出身。子どもの頃は「赤毛のアン」や「若草物語」を愛読した。

読書をあきらめたくない

 看護師になって7年目の25歳の時、手に持つ物を落とすようになった。結婚し妊娠した直後にALSを発症。長女を出産したが、少しずつ筋肉が動かなくなった。

 「絶望でした」…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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