あなたも写真展やってみませんか――。福岡市博多区の老舗写真店で、「誰でも開ける写真展」が随時開催されている。デジタルが主流になった時代にあって、紙焼きの写真にこだわる社長のアイデアで始まった企画。9月末まで展示が決まっている盛況ぶりだ。
JR博多駅前のビルの地下2階に、老舗写真店「近藤カメラ」がある。フィルムやアルバム、中古カメラといった商品が並び、プリント注文ができるパソコンも備え付ける。その店内の6平方メートルほどの壁に、15枚の写真が飾られている。
7月末まで開催中の写真展「MUGENの鉄路」。北海道・利尻富士の夕暮れや、長野県の雪山、長崎の大村湾などを背景に走る列車の写真が並ぶ。島根と広島を結んでいた旧三江(さんこう)線の列車が、最終営業日に満開の桜の中を駆け抜ける風景も。いずれも福岡市の会社員、迫(はざま)洋佑さん(30)が全国各地で撮影したものだ。
今年4月に福岡に転勤してきたばかり。たまたま店の前を通りかかり、写真展を知ったという。鉄道写真が趣味だが、展示する機会は今までなかった。「写真を印刷して、飾ってみるとこれまでと全く違って見えて感動した」と話す。
近藤カメラは1946年創業。近藤晃社長(48)の祖父・圭三郎さんが、国鉄博多駅近くで店を開いた。終戦直後の物資が乏しい時代、最初はレントゲン用のフィルムを売っていた。
その後、旧福岡交通センター(現在の博多バスターミナル)に移転し、2013年から現在のビルの地下2階に。ファストフード業界で働いてきた晃さんがこの時から3代目社長を継ぎ、母親の多恵子さん(76)と一緒に店を切り盛りしている。
近年は写真のデジタル化が進み、紙焼きの注文は大幅に減った。それでも晃さんは、柔らかさや鮮やかさなど客の希望に沿って風合いを変えられるプリントにこだわってきた。
客との交流も大切にし、一緒にカメラを持って遠足に出かけたり、その時に撮った写真を店内に飾ったりしてきた。写真展の企画もその一環。常連客に声をかけたのがきっかけとなり、昨年12月から、誰でも出展できる一風変わった写真展が始まった。
最初の展示会は、20代の夫…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル