コロナ禍のただなかでの受章に、世情を配慮し、「まことにありがとうございます。心より感謝致しております」と言葉少なにコメントした。
上方の人情喜劇を中心に日本を代表する喜劇女優として舞台に映像に活躍。かつて、「上方人情喜劇の神髄は哀(かな)しみ」と語ったように、生活感のある関西弁、哀感にじむ演技で、上方の女の生きざまを笑いと涙のなかに描き続けてきた。
織田作之助・作「夫婦善哉」の頼りない夫を支える蝶子、早世した天才女性漫才師の成功と苦悩を体現した「おもろい女」のミス・ワカナなど、どんな境遇にあっても懸命に生きる人間への深い共感が見える。
父は松竹新喜劇の黄金時代を築き60歳で亡くなった藤山寛美さん。3年前に患った乳がんを乗り越え、父の年齢も越えた。3月の大阪新歌舞伎座、5月の大阪松竹座の公演が相次いで中止になったが、「皆々様に喜んでいただける上方喜劇にますます、精進してまいりたいと思っております」と、舞台への思いは尽きることがない。(亀岡典子)
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