自民党最大勢力の細田派(清和政策研究会、98人)と第2派閥の麻生派(志公会、54人)が、菅義偉政権下で「逆風」に直面している。両派には首相が断行した人事に不満がくすぶるが、反転攻勢を託せる後継者は見いだせていない。安倍晋三前首相の早期復帰待望論が根強い細田派には「桜を見る会」問題の再燃も影を落としている。 両派に所属する衆院当選3回の議員30人超は2日夜、東京都内のホテルで会合を開催した。安倍氏を慰労する目的で、麻生派会長の麻生太郎副総理兼財務相も顔を出した。新型コロナウイルスを「国難」と位置付け、結束して菅首相を支えることを確認した。 出席者によると、安倍氏は「将来の日本のために頑張ってほしい」とエールを送り、麻生氏は次期衆院選について「逆風が吹いたときも勝てる戦い方の準備をしておくように」と述べた。約1時間半の会合は大いに盛り上がったという。 ただ、安倍、麻生両氏の盟友関係を基盤に前政権の中枢を担ってきた両派の現政権に対する思いは複雑だ。9月の総裁選で支持した菅政権の発足以降、徐々に影響力を失いつつある兆しがあるからだ。 細田派は党幹事長や官房長官など希望していたポストを得られなかった。次期総裁選をめぐっては衆目の一致する候補がおらず、次期衆院選に向けても選挙基盤が弱い3回生を多く抱えている。「総裁派閥でなくなり、他派の草刈り場になるのでは」(中堅議員)との危機感は強い。 そうした事情を背景に、派内では安倍氏の早期派閥復帰を期待する声が強まった。「再々登板」の可能性を残しつつキングメーカーとして影響力を持てば、派の存在感や求心力が高まるとの計算があったためだ。 しかし、最近になって安倍氏の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会で安倍氏側が会費の一部を補填(ほてん)していたことが発覚。政治資金規正法違反の可能性も指摘される中、中堅は「安倍氏は知らなかったとはいえ、すぐには戻れないのでは」と不安視する。 一方、麻生派は派内の総裁候補である河野太郎行政改革担当相の出馬意欲を抑えて総裁選では首相支持に踏み切った。ただ、新たな入閣は、待機組だった井上信治科学技術担当相のみ。若手は「麻生氏ら幹部は怒っている」と語っており、両派が政権とどう間合いをとっていくのかが注目される。(沢田大典、今仲信博)
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