「保守」を自任する政治家として、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との関係をどう見るのか。細田博之衆院議長の説明責任は。「国葬」をめぐる国会と内閣の関係はどうあるべきか――。衆院議長を務めた伊吹文明氏(84)に聞いた。
――教団と関係を持つ議員は、安倍晋三元首相の派閥、清和会系に多いですね。
「それは(安倍氏の祖父で元首相の)岸信介先生から関係が始まっているわけだから。1960年代当時、東西冷戦だから、裏側にどういうこと(教義)があるかということよりも、共産党、共産主義に対抗するために(戦前に右翼政治家として活動し、政界の黒幕とされる)笹川良一氏と、岸先生で関係をつくった。自民党の先輩たちがそういうものにひかれたことは否定しない。それが派閥の流れとして今につながっている」
「それ以来、全く没交渉だった」
――保守の立場から、教団の教義をどう見ますか。
「保守の考えとは相いれないものだ。韓国はアダムの一番立派な国で日本はそれに従属すべき国だと。植民地化などでひどい目に遭わせたから我々に償いをするのは当たり前だという考えだ。保守が一番大事にしているのは、民族が醸成してきた伝統的な規範や良識。彼らはその伝達装置の一つとしての国家を辱めている」
――ご自身、政治家として旧統一教会側との関係はなかったのですか。
「1983年の初当選後に地元市議の長老が、共産党と戦う団体があるから一度、のぞいてみませんかと。京都は共産党(などからなる革新)府政からやっと抜け出したところだった。それが国際勝共連合の事務所だった。霊感商法が当時、問題になる中で、統一教会の政治団体だということをだれかが教えてくれた。教義を少し調べてみたら、問題があるものだということが分かり、それ以来、全く没交渉だった」
――保守の顔だった安倍元首相が関連団体の会合に、ビデオメッセージを送っていました。
「やはり安倍さんの政治信条からすると違和感がある。僕は、教義が保守の考えと相いれないという方に重きを置いて、関わりを断つ判断をした。安倍さんは、おかしいところがある団体だけれども、勝共(反共)の方に重きを置いたということかもしれない」
――安倍氏と団体の結びつきで、特定の宗教が政治に影響を与えていたのではありませんか。
「ビデオメッセージが教団本体の信者獲得とか、霊感商法の物品販売とか高額寄付に対して、大変な恩恵を与えたのか、具体的な効果があったのか証明できないとなかなか難しい」
――元首相がメッセージを送るのは、やってはいけないことでは。
「僕は、彼らが反社会的だと認識していますよ。けれども、けしからんというだけで政治をやりだしたら、とんでもないことになってしまう。何が問題なのか、どう線引きすべきかは、国会で議論をして決めたらいい」
――安倍氏本人と教団について話したことはありますか。
「まったくない。ただ、安倍さんというより岸さんや福田(赳夫元首相)さんの流れの中で統一教会はやはり清和会との関係があるという漠然とした感じはあったけどね。安倍さんがそんな立場にいたってことも全く知らなかった」
――自民党幹事長の経験者として、安倍氏による信者票の割り振りなどは当然知っていたのでは。
記事の後半で記者は伊吹氏に、細田博之氏の進退についての考えを聞いています。「政界のご意見番」は何と答えたのでしょうか
「いや知らない。誰が幹事長…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル