2016年4月の熊本地震で山が崩れるなど、甚大な被害が出た熊本県の阿蘇カルデラ西部。土砂災害の危険から避難した住民が、慣れ親しんだ地に戻ってきた。安心して暮らせる場所にする取り組みが続く一方、離れたままの住民もいる。共通するのはふるさとへの思いだ。(後藤たづ子)
傾斜地に田畑や住宅が並ぶ立野(たての)地域は、地震で248世帯が全半壊し、更地が目立つ。その一角の小さな畑で、丸野瑛子さん(76)が野菜の手入れをしていた。昨年5月、仮住まいだった熊本市のアパートから「絶対帰りたい」という夫(84)と戻ってきた。
半壊した自宅を1階だけ修復した。窓から東の熊本平野の方まで見渡せる。「(周りにもアパートが立つ)市内ではカーテンも開けられんかった。先祖の墓も毎日見られる。帰ってきてよかった」。少なくなったが、夜に近所の家の明かりがともると「ほっとする」。高齢の2人を気にかけ、近所の人や駐在所の警察官が声をかけてくれるのがうれしい。
作業する畑は地震前、水田だった。ここを借りていた隣人は避難後にそのまま転出。「雑草が茂っていたら治安上も不安」と、少しずつ耕して野菜や花を育てる。色とりどりの花が元気をくれる場所にしたいと思う。
地元では14年の豪雨でも土砂…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル