政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会(尾身茂会長)が24日、大規模イベントの人数を5千人までとする制限措置を再延長すべきだと結論付けたことは、感染を抑えつつ経済を段階的に再開する政府の当初のシナリオに狂いが生じたことを意味する。 経済の活性化につながる「人の移動」関連の政策は誤算続きといえる。イベント制限緩和や観光支援事業「Go To トラベル」は、5月に緊急事態宣言を全面解除して以降の感染増を受けて方針転換を余儀なくされた。 分科会は感染状況について、新規感染者数は「急速に増加した地域もあり、地域差がある」としたほか、入院者数も「一部地域で増加が続き高水準」と指摘した。地域間のばらつきが、全国一律でのイベントの制限緩和を困難にしている面もありそうだ。 政府はそのかじ取りに苦慮しており、経済の減速に神経をとがらせる。4~6月期の国内総生産(GDP)成長率は年率換算で戦後最悪の27・8%減となり、緊急事態宣言が経済に与えたマイナスが鮮明になった。西村康稔経済再生担当相は分科会後の記者会見で「感染を防止しながら経済社会活動を継続し、両立を図る」と述べ、「3密」回避など新たな日常を定着させる必要性を訴えた。 両立には、めりはりのある感染防止対策が不可欠だ。分科会は、大都市部の歓楽街の接待を伴う飲食店で感染が増え地方に広がった経緯を踏まえ、次の「波」に備え対策を強化する政府のタスクフォース(専門組織)を早急に設置するよう提言した。冬に想定されるインフルエンザとの同時流行に備え、政府は検査体制や保健所機能の強化といった課題の解決を急いでいる。 国立感染症研究所の鈴木基・感染症疫学センター長は24日、厚生労働省に助言する専門家組織の会合に1月16日~5月31日を「第1波」、6月1日~8月19日を「第2波」とした比較をまとめた資料を提出した。感染者数は第2波が圧倒的に多いが、感染者に占める70歳以上の割合や死亡者数は第1波を下回った。 西村氏が会見で「定義をしているわけではない」と述べたように、政府は現状を「第2波」とは捉えていない。「第1波」とされる緊急事態宣言時とは状況が異なっており、経済を動かしていきたい思いも背景にありそうだ。(沢田大典)
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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