2007年に財政破綻(はたん)し、財政再建団体(現・財政再生団体)に転落した北海道夕張市。5年後の12年、行政サービスが削られ、厳しい状況下にある同市で私はある家族に出会った。両親と4男4女計8人きょうだいの大家族、谷口さん一家だ。子どもたちは民謡を習い、4人の男子は幕末の志士らにちなんだ名前――。そんなユニークな一家を、朝日新聞教育面の連載「いま子どもたちは 北の大家族」で9回にわたり紹介した。
あれから10年。一家のその後を描きたいとの思いで21年11月30日、夕張を訪ねた。最初の取材後年賀状のやり取りを続け、二度ほどお邪魔したこともあるが、会うのは久しぶりだ。
線路の高架下をくぐり、少し坂を上った先にある広い敷地に立つ家は変わっていない。わりばし工場だった建物を改装した平屋だ。母鏡子さん(55)が「玄関の靴、大きくなったでしょう」と出迎えてくれた。
10年前、すでに結婚して家…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル