「朝日放送テレビ」(大阪市)の朝の情報番組で編集長をしている報道局主任の山田健太郎さん(38)は2年前にゲイであることを家族や同僚に打ち明けた。かつては「絶対にばれたくない」と、女性と付き合い、いくつものうそを重ねてきた。「異性愛を前提とする社会で、人からどう見られるかばかりを気にしながら生きてきた」と振り返る。
飲み会の「ノリ」になじめなかった
自分がゲイだとはっきり気づいたのは20歳を過ぎた頃でした。とても戸惑い、激しい自己嫌悪に陥り、命を絶つことを何度も考えました。
女性を好きにならなければと思い込み、30歳過ぎまで何人かの女性と付き合いました。でも、気持ちが追いつかず、長続きしなかった。自分はゲイではないとカムフラージュするために他人を利用してしまい、本当に申し訳ないことをしました。
友人の結婚式ではふたりのなれそめのVTRを何本もつくってきました。頼まれるのは光栄なことと思いつつ、僕はこうしたものをつくってもらえることはないし、温かい家族に囲まれて生きていくことはできないと思っていました。
男性ばかりの飲みの席では、「あいつは胸がデカい」「あの女がいい」といった下ネタに付き合わされる苦痛を感じてきました。
僕は自分の性的指向がばれないように必死で押し隠しているのに、相手はダダ漏れで同調するように強いてくる。恋人の有無や性的な経験を共有することで親睦を深めようとするあのノリは何なんでしょうね。まるで違う宗教のよう。彼らの幸せそうなノリに入りたいんだけど、どうしてもなじめない。
話を振られるとつらいので、とにかくお酒を飲んで、ぐでんぐでんなキャラを装っていました。
職場で同性愛を公表している人はおらず、十数人いる同期の中で独身は僕一人。「ゲイなんじゃないの」とからかわれると、「めっちゃ女好きだよ」とごまかしてきました。
ゲイだとバレるのは本当に恐怖でしかなかった。自分が大うそつきだと露呈してしまうこともそうだし、メディアがつくったイメージなどから気持ち悪がられるのではとの不安もありました。
ひと月に3人の女性を紹介され…
30代半ばを過ぎて独身でいると、同僚や取材先から「良い人がいるから」「とにかく一度会って」と、やたら女性を紹介されてしまう。僕のことをよく伝えてくださっているので先方も前向きで。断るのにいつも苦労してきました。
2年前の春、1カ月に3人もの女性を紹介され、僕は疲れ果てていました。人からどう見られるかを気にしながら生きるのはもうやめたい。まず最初に、自分にとって一番大切な家族にカミングアウトしようと考えました。
東京に暮らす母は「子どもを作って育てることが社会への恩返しだよ」と説いていた。僕が実家に帰る度に「いい人いないの?」「結婚はまだ?」と尋ね、僕の結婚を心から願っていました。
親を悲しませてしまうと思うとなかなか勇気が出なかったのですが、5月の母の日に、両親と妹、それぞれに手紙で打ち明けました。
「僕は、ゲイです。
治療すれば治るのかもしれな…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル