町田正聡
給油のお礼にアブラムシならぬカブトムシをどうぞ――。鹿児島県日置市吹上町にあるガソリンスタンドでは、夏になると子連れなどのお客にカブトムシやクワガタを贈っている。店を営む福田晋拓(ゆきひろ)さん(50)、直美さん(52)夫婦が16年前から続けてきた。「子どもたちの笑顔がうれしくて、やめられない」と福田さん。今年も大忙しの夏休みがやってきた。
虫のプレゼントを始めたのは、福田さんが父親からガソリンスタンドを引き継いだ2006年だった。スタンドの水銀灯には夜間、カブトムシやクワガタが集まる。それを捕まえておき、子ども連れの客にプレゼントしたところ、喜んでもらえたのがきっかけだ。
夏休みが近づくと「帰省してくる孫のために」と近所のお年寄りもやって来る。評判は年々広がり、今では薩摩川内や鹿屋など市外からわざわざ給油に来る客もいるという。
学校が夏休みに入ると、虫の希望者が増える。スタンドの明かりに集まる虫だけでは足らなくなるため、高校生の息子2人にも手伝ってもらい、毎晩、虫を「補充」しに近所の山へ行く。カブトムシなどが好む蜜を出すクヌギの木を昼休みに探し、目星を付けておく。多いときは一晩に20~30匹ほど捕まえるという。
カブトムシを切らさないように4年前からは幼虫を購入し、店の一角で飼育して羽化させるほどの熱の入れようだ。以前、水銀灯をLED電灯に変えたところ、虫の集まりが悪くなったため、半分は水銀灯を残しているという。
プレゼント期間は毎年、6月末ごろから夏休みが終わる8月末までで、1人に1匹ずつ。今年は梅雨の短さが影響したのか、クワガタが少ないという。
「もらった虫を育てながら、子どもたちも命の大切さなどを自然に学んでいる様子です」と、福田さんは目を細める。
問い合わせは福田石油店(099・296・2988)へ。(町田正聡)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル