現場へ!認知症当事者はいま③
仙台市の精神科医、山崎英樹さん(59)は、認知症当事者の丹野智文さん(46)と出会って、人生の希望を学んだ。
医師になりたての20代、山崎さんは老人病院や精神科病院で、医療と人間の惨(むご)さに絶望していた。
鉄格子のような柵に覆われ、手首にひもで縛られた痕がタコになるほど自由を奪われている人たち。糞尿(ふんにょう)の臭い。生きる力を根こそぎ奪い、人生をあきらめさせる医療の現実。「地獄はここにある」と思った。
専門職や家族、社会がこの光景を生みだしている。そして、その果ての痛ましい最期に自分も手を貸している。縛らない医療を率先したが、病院の限界も感じた。
1999年に独立。仙台に小さなデイケア診療所「いずみの杜(もり)診療所」を建て、これまで宮城県内に介護施設や作業所を作って、本人が入院せずに最後まで地域で暮らすための拠点を増やしてきた。
だが、職員にケアの大切さを一生懸命に説いても、どこか空々しい気がしていた。そんな2013年秋、丹野さんの存在を知った。
拡大する山崎さんは丹野さんと出会い、薬や治療も本人に相談して一緒に考えるようになった。当事者ネットワークの事務局も担う=仙台市のいずみの杜診療所、中井征勝撮影
翌年6月。自身が代表を務める…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル