絶滅危惧の専門職 過酷ないじめ乗り越え、目指す宮大工

 宮大工を目指す若者たちが集まる「塾」がある。

 大阪府太子町にある、一般社団法人「宮大工養成塾」。現在、大阪校では6人の塾生が、中学や高校を卒業後に入塾し、宮大工を目指している。

 塾生は三重県志摩市薬師寺で、3年前から始まった老朽化の進む本堂や庫裏などの修復に取り組む。

 宮大工養成塾は若手宮大工の育成のため、2016年に「金田社寺建築」の金田優社長(37)が設立。塾生は授業料などの費用を納め、金田社長と塾生のみで、実際に寺社の建築や修復をしながら宮大工の技術を学ぶ。

 宮大工は、手作業で木材を加工し、釘や金具を使わない「木組み」と呼ばれる伝統的な工法などを駆使して、神社仏閣などを建築したり修復したりする。

 伝統的な工法を学ぶには、通常、わずかな給料を受けながら過酷な内弟子制度で修業を積み、数年かけて一人前の宮大工となる。そんな過程が今の若者には敬遠され、現在では宮大工は千人以下とされている。

 塾によると、宮大工の技術を学ぶ専門学校もあるが、神社仏閣と実際に修復や建築の契約をすることはできないため実務で学ぶことは難しい。結局、卒業後に厳しい下積みを経験することに変わりはなく、そのために業界を去る若者もいるという。

 一方で、宮大工養成塾では3年間、作業現場か塾内の寮で共同生活をしながら、塾が用意した「ロードマップ」をこなし、実際の建築や修復に携わりながら宮大工を目指していく。

 人件費が低く済む分、塾に仕事を依頼する神社仏閣も、通常より安い価格で契約できるメリットがあり、将来にわたって必要な宮大工を育てることにも貢献できるというメリットもある。

 塾では、卒業後に宮大工の仕事を続けられるように、働く条件面でも塾生をサポート。22年から「宮大工ドラフト」を主催し、卒塾する生徒のレベルに応じて企業からの採用を募り、生徒に代わって給与などの契約交渉をする。ドラフトにかからなかった生徒には、就職支援として面接に応じる企業などを探すという。

 1年生の大倉慎ノ輔さん(19)は、小学生から中2まで教員や上級生、同級生から暴力やいじめを受けており、中3で不登校になった。加害生徒のいない高校を卒業後、宮大工を目指し入塾した。

 「宮大工になって、見返してやりたい」(金居達朗)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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