緊急事態が「日常」になってしまった 都の数字読み解く

 新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言の期限が21日に迫る中、東京都内の新規感染者数が再び増加に転じている。新規感染者数は15日時点で前週の同じ曜日を7日連続で上回り、週平均でみると1割増になった。「宣言慣れ」で街中に人出が戻り、不透明感が増す都内の感染状況をデータから読み解いた。

 「下げ止まり、ならぬ、少し上がっております」

 小池百合子知事は14日、感染状況について記者団に問われ、そう語った。従来のウイルスより感染力が強いとされる変異株の拡大への懸念が示され、専門家からは「急激な再拡大のおそれもある」との指摘も出始めている。

 都内の新規感染者数は2月25日ごろから、下げ止まりの傾向が顕著になった。その後、250~270人台で推移してきた週平均の感染者数は、3月9日から増加傾向が続き、15日時点で287・6人に。1週間前よりも34・2人増で、前週比は113・5%で、2月以降初めて1割以上の増加となった。

 感染状況の悪化とともに、データから垣間見えるのは「気の緩み」だ。

 8日までの1週間で感染経路別の割合をみると、会食が前週の3・8%から4・5%、接待を伴う飲食が前週の0・9%から1・8%と微増。12日の都のモニタリング会議では、専門家から「一部の繁華街では1月8日の宣言発出直後よりも人の流れが増加している」との指摘が出た。

 都のある幹部は「『緊急事態』と叫び続けて2カ月以上。いまの状態が『日常』になってしまって気の緩みを生んでいるのではないか。感染者数が下がるという予兆も見えない」と危機感を強める。

 都立墨東病院では13日、医師や看護師ら職員5人が感染したと発表。5人は今月4日に病院近くの居酒屋で会食した後、医師宅で2次会を開き、マスクをせずに長時間会食していた。

 気がかりなデータは新規感染者数だけではない。宣言下で、都の担当者が危惧してきたのが、検査の陽性率の下げ止まりだった。感染状況を判断する指標の一つで、市中感染の広がりを示すとされる。ピーク時の1月7日には14・5%だったが、2月19日には3・9%まで下がった。ただ、そこからは一向に減らず、3週間以上3%台で推移している。

 昨夏の第2波ではピーク時に7%(8月6日)だった陽性率はその後減少。だが3%を切ることがないまま、11月以降の第3波になだれ込んだ。都の担当者は、当時の教訓を踏まえ、「3%を切るくらいにしないとなかなか感染者数は減らないのではないか」と懸念を示す。

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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