政府が緊急事態宣言を発令したことから、東京都は複数の業種を対象に自粛要請することになりました。緊急事態宣言の根拠法となっている新型コロナ特措法では、知事の権限で施設の使用を制限できると記されており、東京都では広範囲にわたって使用制限を行う方針でしたが、現実には政府から横やりが入り、対象範囲が限定されたといわれています。日本では政府の権限が強すぎ、地方自治体が独自の政策を打ち出すことができないという問題が指摘されてきましたが、今回の緊急事態宣言でもこの問題が露呈した格好です。
小池都知事「代表取締役だと思っていたら、中間管理職だった」
新型コロナ特措法(新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正特別措置法)では、知事は「多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる」と定められています。つまり、地域の状況に合わせてどのような使用制限を実施するのかを決める権限は知事にあると解釈できます。このため小池百合子東京都知事は当初、理髪店や居酒屋など広範囲にわたって使用制限を要請する考えでしたが、ここに待ったをかけたのが政府といわれています。
同法では、政府は都道府県知事と「新型インフルエンザ等対策に関する総合調整を行うことができる」とも記されています。政府はこの条文を根拠に東京都と協議を行い、広範囲な業種に使用制限を加えないよう要請したと報道されています。
背景にあるのは東京都と政府の温度差です。感染者数が急増している東京都は、感染拡大防止が最優先課題となっており、経済活動を犠牲にしても感染拡大を防ぎたいと考えていました。一方、政府は景気の落ち込みを最小限にするため、広範囲に使用制限を加えることには消極的でした。
どちらの考え方にせよ、決めたことに対しては責任を持つというのが政治に課せられた使命であることは明白ですから、知事が権限を有しているという条文がある以上、本来は知事の権限と責任において使用制限の範囲を決定するのがこの法律の本来の趣旨と考えるのが自然でしょう。
小池氏は政府から事実上の指示が出されたことについて、「代表取締役だと思っていたら、中間管理職だった」と述べ、知事に権限が委譲されていない現状を皮肉まじりに批判しています。
総合調整ができるという文面を根拠に、政府が事実上の指示を行うということであれば、知事にではなく政府に権限と責任を集中させるべきですが、現時点では責任は知事にあるが、指示は政府が出すという状況になっています。
(The Capital Tribune Japan)
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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