一般職から総合職へ転じる制度があるのに女性2人に転換の機会を与えなかったのは男女差別にあたるとして、横浜地裁が神奈川県の企業に対し、それぞれ慰謝料100万円の支払いを命じたことがわかった。女性らが24日、東京都内で記者会見して明らかにした。
支払いを命じられたのは、巴機械サービス(神奈川県平塚市)。取材に対し、「判決を確認し、内容を精査のうえ対応を検討する」とコメントした。同社は東証1部上場の遠心分離機メーカー、巴工業の子会社だ。
判決によると、2人は2007年と08年に入社し、総合職への転換制度の利用を繰り返し希望した。だが、会社側は基準や方法を示さず、当時の社長は面談で「女性に総合職はない」と発言。新谷晋司裁判長はこれについて「女性であることを理由に総合職への転換の機会を与えていないものと強く推認される」と指摘。職種の変更について、性別を理由とした差別的な取り扱いを禁じる男女雇用機会均等法の趣旨に違反すると認定した。
同社は1999年に総合職と一般職を区別する人事制度を導入。それ以降に採用した総合職56人は全員男性で一般職9人は全員女性だった。判決は、女性に電話番やお茶くみをまかせるなど、同社にある男女差別的な風潮も精神的苦痛を増大させたと指摘した。
ただし、2人が会社側に求めた総合職との賃金格差分の支払いは認めなかった。女性を一般職として採用したことも「一応の合理的理由」があるとした。
原告の女性の1人は会見で、事務職の求人の選考を経て採用されたが、入社してはじめて男性が総合職、女性が一般職になっていることを知ったと説明。「同じ試験なのに、納得できなかった」と当時から違和感を感じていたと訴えた。
もう1人の女性は「業務は男性と変わりがないのに、なぜ総合職になれないのかと伝えても、社長に『女性はなれない』と言われ、怒りを覚えるしかなかった。このような結果が出てとてもうれしい」と話した。
原告側代理人の石渡豊正弁護士は会見で、「原告の女性が男女差別を長年、明確に訴え続けたのを重く見た判決だと思う。就業規則に転換の規定があるだけで具体的な手続きや基準が全く整備されていない。それを放置してきたのが厳しく指摘された」と語った。(岡林佐和、吉田貴司、藤えりか)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル