4回目の緊急事態宣言の発出が決まった大阪府。府の要請に応じる形で宣言が出されてきたこれまでの流れと異なり、今回は府の要請を待たずに政府が「頭越し」で発出を決めた。
吉村洋文知事は30日夜に開かれた府の対策本部会議で、「デルタ株(インドで見つかった変異株)の感染拡大力はすさまじい。危機意識をどう共有するかが今回は重要なポイントだ」と語った。一方、会議では政府の決定に対し、「(宣言の)基準はまだ満たしておらず、唐突感がある」(山口信彦副知事)との声も上がった。
28日、吉村知事は定例記者会見で、軽症中等症病床か重症病床のいずれかの使用率が50%に達した場合に緊急事態宣言を政府に要請することを発表した。
30日時点の病床使用率は軽症中等症病床が35・5%、重症病床が12・9%。吉村知事が設けた基準は満たしていない。それでも政府が宣言発出を決めたことについて、吉村知事は「法律上、国が判断すること。考え方も理解できる」としつつ、政府と府との見解の違いも強調した。
府が特に懸念するのは、繰り返される緊急事態宣言で府民の行動変容が期待できなくなっていることだ。
吉村知事は「宣言が何度も繰り返され、オリンピックもある。『なんで自分たちばかり自粛なんだ』という声が大きくなっている」と指摘。「リスクコミュニケーション(リスクについての情報共有)を成立させるためにも基準を作って、(府民に)理由を事前に説明するのが重要ではないか」と強調する。
大阪市の松井一郎市長も30日、「東京はずっと宣言中だが、一番(多い)感染者が出ている。宣言をしたら(感染拡大が)止まるわけではない」と述べ、宣言の効果を疑問視。8月に予定されている市立中学校の修学旅行は実施する方針を示した。
■迫るデルタ株の懸念 置き換わってないのに感染拡大
府の対策会議では、府内では、東京都に比べるとデルタ株への置き換わりが進んでいないとの見解も示された。ただ、今後デルタ株が増えた場合、府内の感染スピードが速まる恐れがあるという。
大阪府内の1週間あたりの新規感染者数を前週と比較すると、16~22日は1・58倍、23~29日は1・67倍の伸びで、東京都とほぼ同じ速度で増え、感染者数も1千人に迫っている。
一方、厚生労働省に助言する専門家組織の分析によると、東京都では8割がデルタ株に置き換わっているが、大阪府では3割弱にとどまっているという。
大阪では3月1日~6月20日の「第4波」で、医療が崩壊状態に陥った。この時は、従来株から英国で確認されたアルファ株への置き換わりが急速に進んだ。大阪府のアルファ株の割合は3月上旬は約25%だったが、4月上旬に約75%、5月上旬にほぼ100%となった。
今回のデルタ株は、アルファ株より感染力が1・5倍強いとされている。大阪府の藤井睦子健康医療部長は対策会議後、記者団に「これからのリスクは(東京より)大阪の方が高い。置き換わりが進めば、拡大スピードが上がってしまう」と懸念を示した。(久保田侑暉、浅沼愛)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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